大和文華館「朝鮮美術の精華~絵画と工芸」

和文華館のお庭はいつ行ってもその時期の趣が楽しめる。
若くやわらかな緑と鶯の声?に、山里に来たように錯覚する。

「朝鮮美術の精華~絵画と工芸」
この展覧会は絵画のほうがメインの展示かなと思う。絵画より工芸品の方が好きなので、どうしようかと思ったが、心に残るやきものにも出会えてよかった。

 

 

最初の展示作品「鉄砂青花葡萄文大壺 朝鮮時代」は白磁の壺の肌に葡萄が水墨画のように浮かび上がっている。同じ会場にある水墨画の手法と通じるとキャプションにある。
その水墨画「葡萄図 李継祜筆 朝鮮時代」は勢いよく伸びるツルがつくる構図の中に水墨の濃淡で描かれたみずみずしい葡萄がたわわに実っている。
たしかに壺に描かれている葡萄と似ているなぁ。
やきものの肌の上に、水墨画のように描くのは難しいのではないかしら。どちらも素敵な作品だ。

 

キャプションといえば、大和文華館ではいつも詳細なキャプションが添えられているので、私は一生懸命拝読している。
作品をじっくり鑑賞する。キャプションを読む。これだけで、ずいぶん学ぶことができる。
キャプションの言葉は、ときに学芸員さんの人柄を思わせることもあって、私にとっては、美術館を訪れる楽しみのひとつになっている。

 

高麗青磁の器が展示されているケースは上から鑑賞するような高さだ。見込を鑑賞するにはよいのだけれど、器の側面を見るのがむずかしい。スクワット姿勢。鍛えていないからすぐコケる。

花の象嵌が施された「青磁象嵌花卉文盃 高麗時代」
花をかたどった8面の器形といい、細やかな象嵌といい、とても愛らしい。これを受ける托もあったのだろうか。
お隣に置かれた「青磁象嵌花文合子 高麗時代」と並んで優雅な高麗の文化を偲ばせる。

「尚薬局」の銘がある「青磁合子 高麗時代」
これは、2018年東洋陶磁美術館で開催された「高麗青磁~ヒスイのきらめき」展で薬研の近くに展示されていたものと同じ作品だろうか。当時、講座か何かで、同じく「尚薬局」の銘がある定窯の作品と似ていると教えていただいたと思う。
高麗青磁は灰色がかった青緑色と表現されることが多い。特にその青みが美しく出ている作品だと思う。

東洋陶磁美術館で開催された「高麗青磁」展会場で撮影した青磁陰刻「尚薬局」銘盒


日本のわび茶で大事にされたざらっとした肌合いのお茶碗(熊川手、斗々屋手、伊羅保手)もあった。

「柿の蔕手茶碗 朝鮮時代」は、ざくざくした肌の感じや色合いが土から生まれた自然物のようだ。

 

絵画の方は、朝鮮半島仏画文人画、水墨山水画、面白い民画に加え、中国、日本の絵画まで幅広い展示だった。東アジアという地域の中で、今思うよりずっと長く、広く文化交流と影響があったのだろうと感じさせられた。


展示の最期の方で、何かに睨まれた気がして、首がすくんだ。伊藤若冲筆の「釣瓶に鶏図」の鶏だった。絵画はやはりメッセージが強い。

 

さて、散る前ののササユリをよく見て帰ろう。