東洋陶磁美術館「東アジアの青磁のきらめき」~奇跡が起きた

春から始まった青磁の展覧会ももうすぐ終わるなぁ、と思っていたら、終幕に合わせるかのようなビッグニュース。
長い間所在不明だった旧国宝が、それもあの飛青磁花生に瓜二つの作品が、急に現れるなんて、どういうことだろう?
東洋陶磁美術館が誇る全てにおいて完璧な国宝「飛青磁花生」と、ほぼ同じスタイルの作品が寄贈されるなんて!

 

青磁花生(重要文化財) 元 14世紀 龍泉窯

 

やっぱり、MOCOだねぇ。世の中に素晴らしいモノ、コトはたくさんあるけれど、私にとって、これほどわくわくさせてくれるところは他にない。きっと、このタイミングで発表になるように仕掛けていたにちがいない。と、思っていたのだが、講演会での小林先生(小林仁学芸課長代理)のお話では、全くの偶然だといわれる。本当かなぁ。まぁ、でも、そういう素晴らしい贈り物を引き寄せられたのだから、やはり、お見事というほかはない。
そのおかげで、両者を並べて鑑賞するという恩恵に与ることができる。

 

左が国宝、右が重要文化財

 


大阪にいてよかった。大阪の宝がまた増えたねぇ。
元から日本へ渡って、幾世も時を超え、名だたる方々の手を経て、今ここにこれほど良い形のままで作品が鑑賞できることの不思議さよ。
いっぽうで、美術品は幻のように消えてしまうものであることも、教えていただいた。


思えば、2017年にこの東洋陶磁美術館で拝見したイセコレクションは、いったいどうなってしまうのだろう。

 

(2017年の展覧会場にて撮影)

 

あの展覧会では、時系列で中国陶磁の大きな流れを学ばせてもらった。米色青磁の瓶に感動したことを覚えている。貴重な体験だった。オークションにかけられて、散逸してしまうのだろうか?
どこに行っても、末永く作品が大事に受け継がれますように

 

最高の陶磁器とそれにまつわる人々の歴史の深みと重みを、これからも学ばせていただこう。どうぞよろしくお願いいたします。

 

青磁不遊環花生 元 14世紀 龍泉窯
もう一点寄贈された素敵な作品

 

東洋陶磁美術館「CELADON―東アジアの青磁のきらめき」つづき2

栴檀の橋を渡って、すぐ目の前に見えている東洋陶磁美術館へ行くのさえつらく感じる。何という8月の終わりだ。早く館内へ逃げ込まねばならぬ。
さてと、冷気にあたって一服
今日は第7展示室の日本の青磁をよく見るつもり。大阪市立美術館から素敵な作品がいくつか招かれているから、この機会によく見せていただこう。


日本で磁器がやかれたのは17世紀に入ってからだと聞く。古くから、土器や陶器は作られていて、中国のやきものに昔からあこがれていたのに、なぜ、磁器づくりのスタートがそんなに遅くなったのだろう、と疑問に思う。
青磁脈脈(せいじみゃくみゃく)―日本の青磁」と名付けられて、有田窯から鍋島藩窯の作品が続いて展示されている。はて、ところで、なぜ、鍋島焼なんだろう。
鍋島焼が嫌いなわけではない。とても洗練されていて、斬新なデザインのものがあったりして、緻密に丁寧に仕上げられていて、日本が誇るやきものだなぁと、憧れの目で見ている。
いっぽうで、鍋島焼が日本の青磁を代表するものなのだろうか。そこらへんがよくわからない。
まぁ、磁器始まりの地で作られた最高峰の作品ということかなぁ。
以前、大阪市立美術館で美しい鍋島焼を見せてもらった記憶があるが、そこで出会った中の一点が今回顔を見せてくれている。

 


青磁染付色絵青海波梅図皿(17世紀~18世紀)
この作品は「墨弾き」という技法を使って、青海波の模様のところを描いてあるのだそうだ。青磁と染付の青海波の画面割、その画面を絶妙に分ける梅の木の幹、枝ぶり。
デザインも技術も最高級!

 

 





青磁と染付を合わせた作品や、青磁に色絵付けをした作品(有田窯)など、技巧を凝らした美しくも面白い作品を楽しんだ。
あわせて、現代の大家の作品も鑑賞した。青磁は今に続く技術であって、新しい作品が生まれ続けているんだねぇ。

 


はるかな昔のものはもちろん、これから世に出る青磁作品も是非みてゆきたいものだ。

 

MOCO特別展「CELADON~東アジアの青磁のきらめき」つづき

東洋陶磁美術館で撮影してきた耀州窯の輪花盤(10~11世紀)をパソコンの背景にする。実物の2倍ほどに拡大された画像を眺めると、あらためて、釉が溜まったところの色合いとか、正確にかたどられた薄造りの器のかたちなどに驚かされる。

 


これほど完成されたものが、はるか昔に創り出されている事実に圧倒される。
いつもいつもMOCOを訪れると、千年以上も前に作られたものの美しさに心打たれ、魅了されるのだ。

 

 

先日は自然採光展示室の中の作品の青が一層鮮やかに感じられた。これは暑さにやられた私が見た幻か。青磁を見るのに良い時間とは(秋、朝10時?)だいぶんずれているのだけれど。
南宋官窯と龍泉窯の名品に触れて、ひととき、酷暑を忘れ、すべてを忘れ、お部屋においてくれている椅子に腰かけて、ひたすらに眺めていた。

 

 

このごろは、リアル講演会が復活していて、それもうれしいことのひとつだ。人気があって、チケットがすぐ完売になる。オンラインでは味わえない講堂の空気に浸るのは特別だ。待ってました!という感じ。しかし、オンラインのメリットも大きいと思う。遠方でも恩恵にあずかれるし、その日都合がつかなくても、後で配信というサービスを受けることもできる。リアルとオンライン同時進行していただくには、設備に少しお金がかかるかもしれないなぁ。

 


そして、この展覧会は、家に帰ってから、書籍を見ることで、さらに別の味わい方ができる。
求龍堂発行「東アジアの青磁のきらめき」は展覧会の出展作品のうちおよそ3分の1にあたる50点あまりの作品画像を掲載している。
六田知弘氏撮影の作品自体が大きく載っていて迫力があり、手元で作品をみているような感覚がある。写真だからこそ表現できる陶磁器の美しさもあるなぁ。
パラパラとめくっても楽しめるわかりやすいレイアウトになっている。お値段もとても手に取りやすくてありがたかった(¥3,000+税)。

 


さて、身体にこたえる暑い夏だ。ときどきひんやりとした青磁の清らかさと静けさに浸ることにして、なんとか乗り切ろう。

 

 

 

 

 

東洋陶磁美術館「CELADON―東アジアの青磁のきらめき」

青磁のうつわの清らかさ、心落ち着く色とかたち、内からこぼれ出るきらめきと変化する神秘性、それには見飽きることがない。

といいながら、今頃はちょっと遠い存在になっているかもしれない。
陶器が好きという友達に青磁の名品の写真を見せたことがある。その人からは「これのどこが良いのかわからへん。」と素直だが、手痛い感想をもらった。
それがたとえ国宝であろうともフーンとか、きれいねとか、その程度の反応しか返ってこない。
今やキラキラ、ピカピカは日常にあふれている。青磁の美しさは控えめで、いかにも地味だ。祖父母の戸棚には青磁もどきがあったように覚えているが、食器売り場でも、近ごろはあまりお目にかかれない。ちょっとさびしいねぇ。

今、東洋陶磁美術館で開催されている特別展「CELADON―東アジアの青磁のきらめき」で、青磁ファンが増えるといいな。館が所蔵しているとびきりの名品の前に一度足を運んでほしいものだ。
青磁は中国の古いやきもののなかでも、基本というか、本流というか、これこそ、東洋の美を体現しているものだと思うから。

さて、今回の私の喜びは、前から見たかった白檮廬コレクションの作品が見られたこと。そして出光美術館の図録に載っていた童子が遊ぶ碗が見られたことだ(おそらく東洋陶磁美術館が貸出しておられたのだろう)。

 


私の足は会場の最後にあたる五代から金時代の耀州窯の作品の前で停まった。彫りの入っていない輪花盤や碗を見ては、その柔らかな光沢のある肌にうっとりする。独特の彫りが入った作品では、彫りと釉溜まりがつくる器面の世界に憧れる。あのような器を使ってみたいものだと思う。久しぶりに月白釉の香炉を見ることもできた。

 



これだけ耀州窯の作品が見られて幸運だ。
小森忍先生作の可憐な壺も拝見できた。

 


私の喜びは他人から見ると、かなり地味かもしれないなぁ。
でも、とにかく、ひそかな幸せをかなえてもらってMOCOさんありがとうございます。

中国陶磁・至宝の競艶4

ひどく忙しい日々が続いて、気が付いたらもう年末…

気を取り直して今年が終わる前に、東洋陶磁美術館「中国陶磁・至宝の競艶」展、上海博物館の作品の中で、ちょっと地味だけれど、見ることができてうれしかったものを書いておこう。

青磁褐緑彩帆船図水注」(唐時代 長沙窯)
輸出用につくられた陶器だそうで、おおらかな図柄やぼこっと盛り上がっている胴部が特徴的だ。この作品のキャプションには、釉下彩文様とある。へぇ、唐時代というのに、技術が進んでいる。

 

同じく唐時代の越窯の青磁水注も覚えておきたい。
越窯の作品を見たことがなかったとき「越窯の秘色青磁」とはどれだけ素晴らしい色のやきものだろうと想像をふくらませ、いざ、実物を見たときにちょっと肩すかしをくらった記憶がある。そもそも現代の物差しで思うことが間違いなのだが。
しかし、今静かにこの作品を見ると、艶やかな肌で、シンプルなかたちで完結していて、やっぱり格が高い。

 

白磁で名高い邢窯の白磁穿帯瓶(五大時代)が鑑賞できたのもよかった。清潔感ある白い器肌が、滑らかな光沢を保っている。昔の書物に名前があがっているものについては、実物を一つでも多く見てみたいと思う。

 

かっこいい、あるいはキュートな龍の文様に惹かれる作品もあった。

 

まず、大きなドラゴンジャー「青花雲龍文壺」(明時代 景徳鎮窯)

 

そして、定窯の「白磁印花雲龍文盤」(北宋時代 一級文物)文句なしだね。

 

「黒地白花龍文 “正八”銘梅瓶」(金時代 扒村窯)安定感はいまひとつだけれど、デザイン性が高くて、走っている?龍もいい感じ。

 

 

「法花金彩雲龍文梅瓶」(明時代 景徳鎮窯)これはかわいい。きらきら飾りの下で舞い踊るドラゴン♡

 

今回は、素晴らしい作品が並ぶ王道を行く展覧会だ。素直に作品を満喫する。
いっぽう、コロナ禍で、きっと悩みながら構成されたであろう過去の企画展は、テーマや着眼点が味わい深く、面白く、陶磁研究や歴史を垣間見ることができて、鑑賞者側の思いも広がるようだった。〇〇禍というのはごめん被るが、どちらのタイプの展覧会もあってほしいなぁ、などと実に勝手なことを夢想する。

 

 

 

中国陶磁・至宝の競艶3

第三部はいよいよ上海博物館と東洋陶磁美術館の作品同士の競艶。何百年かのときを経て、大阪で相まみえた作品たち。

 

そっくりさんのペアがある。

青花雲龍文梅瓶(「春壽」銘)明時代・洪武  景徳鎮窯 左のつまみのあるほうがMOCO所蔵
青花雲龍文梅瓶(「春壽」銘)明時代・洪武 景徳鎮窯


時代の空気を漂わせる華やかな競艶がある。

左から

加彩婦女俑 唐時代8世紀
三彩女子椅座俑 唐時代 

加彩宮女俑 唐時代7世紀


それぞれの奥深い歴史を味わうこともできるし、単に比較しても楽しい。


哥窯の2点の作品を見たとき私には小さな気づきがあった。

(左)青磁管耳瓶 南宋~元時代 哥窯
(右)青磁輪花盤 南宋~元時代 哥窯 
実のところ今まで東洋陶磁美術館の青銅器の形をした哥窯の作品の良さがわからなかった。ところが上海博物館の盤と並んだ様子を見て、ふと思った。おや、こんなに風格がある作品だったのか。大事にされるのももっともなことだとそのとき納得した。
同種の作品が並んだことで、迫力が増したのだろうか。比較して鑑賞出来ることで、より作品に近づけるということもある。しかし本当のところ、なぜ自分がそう思ったのかは分からない。


さて、哥窯が2点ならぶこともすごいことだが、汝窯を3点鑑賞できるということもめったにないことだ。

青磁盤 北宋時代 汝窯 一級文物

とろりとかかった釉の下にガラスのようなひび割れが透けて見える。秞だまりがとてもきれいだ。

 

 

青磁洗 北宋時代 汝窯 
形がとても端正だ。色合いの変化がデザインのようになって面白い。

 

 

そしてMOCOの宝、天青色の水仙盆。青磁水仙盆 北宋時代 汝窯
汝窯作品の違う表情を見られるなんて、なんと贅沢なことだろう。

 

最後にもうひとつすてきな作品を書いておこう。

 

青磁管耳瓶 南宋時代 官窯
釉がふわっと半透明にかかって青っぽい灰色に見える小さな瓶。全体に貫入が見える。几帳面な形がかわいらしい。

まだまだみどころがたくさんあるが、今日はここまで。

 

「中国陶磁・至宝の競艶」2

さて、次に「至宝再興-明時代“空白期”の景徳鎮磁器」というタイトルの展示室へ行こう。
明時代の正統(せいとう)・景泰(けいたい)・天順(てんじゅん)の三代(1436-1464)は、資料が少ないために“空白期”と呼ばれてきたそうで、その時代の作品(上海博物館所蔵14点と東洋陶磁美術館所蔵1点)が展示されている。いくつかの作品を記録しておこう。

 


青花紅彩瑞獣波涛文高足碗(明時代・宣徳 景徳鎮窯)
はじめに、きりっと引き締まったかっこいい高足杯に引き付けられる。青花の波の中、朱いドラゴンが舞い踊っている。青と朱赤の対比が鮮やか。ドラゴンは瑞獣の一つ。これは西洋のドラゴンみたい。そういえば、以前古本屋で求めた「皇帝の磁器」という図録に瑞獣が描かれたいくつかの作品が載っていたっけ。見返しておこう。
瑞獣はいろいろな種類があって、とても面白い。隣の碗にも、ちょっとおかしみのある瑞獣が波涛の中で遊んでいる。

青花紅彩瑞獣波涛文碗(明時代・正統~天順 景徳鎮窯 一級文物)

キャプションに展開した写真をそえてくれているのが嬉しい。

 

白磁花蓮唐草文碗(明時代・正統~天順 景徳鎮窯)

「暗花」(浅い陰刻)という技法による青白磁の碗はモノクロームな陰影がおしゃれだ。

このお部屋には、さらにぐっとくる作品がある。
青花松竹文輪花鉢(明時代15世紀 景徳鎮窯)


どこがぐっとくるのか、図柄の区切りにしている文様が変わっていて絵柄に強さを感じる。半面、かたちは輪花でエレガント。どこか普通でないところが魅力的だ。MOCO初公開かぁ。やっと日の目を見たんですね。


青花琴棋書画仕女図壺(明時代・正統~天順 景徳鎮窯)

大壺に優雅な貴婦人たちの姿が緻密に描かれている。
精緻で、品格があって、堂々として、少しかたい(私の勝手な)景徳鎮のイメージにぴったり合う。


紅緑彩蓮唐草文梅瓶 (明時代・正統~天順 景徳鎮窯)

豊かに張ったかたちのうえを、赤と緑でくっきりと描かれた蓮唐草文や蓮弁文が覆っている。


少し、「明代」の磁器について知りたくなったかな。


ところで、この展覧会の図録はデジタルになっていて、PDFファイルで見ることができる。キャプションもデジタルになっていて、後日読み返すことができる。ミュージアムショップで(紙の)図録がないといわれたときは、正直寂しく感じたが、今後はこういう流れになるのだろうか?