湯木美術館 早春展「春の茶道具取合せ」

また大阪で生活費を稼ぐことにする。

「東洋美術に触れられること」は、ほかのことには代えられない。

 

早速湯木美術館の春季展示を見に行く。

「春の茶道具取合せ」 湯木吉兆庵が昭和59年1月15日に行った茶会の再現展示だそうだ。

いいね、いいね。

新春のあらたまった緊張感と、うきうきとした期待感が伝わってくる。どんなお客が訪れたのか。

実際、お茶会に招かれることはないけれど、掃き清められたお庭や、冷たく澄んだ空気、華やいだお客の装いが浮かんでくる。

 

 

「甲子大国祭図きのえねだいこくまつりず」(白隠慧鶴はくいんえかく筆 江戸時代18世紀)白いネズミたちが何やら賑やかしい。大国様と白ねずみの取合せで、いかにもおめでたい掛物だな。

「少庵寄附」という文字のはいった円満な姿のお釜(与次郎作 室町~江戸時代)がどっしりと構えている。

水指は「古染付山水図水指」(明時代17世紀)だ。芋頭だったかな。

 

お道具を見ただけで、お客の心は弾んだことだろう。

 

メインのお茶碗は 黒茶碗 銘「曙あけぼの」(一入作 江戸時代17世紀)。

なるほど、黒い肌の中に鮮やかに赤い斑点が見える。これが銘の由来だそうだ。

どうして、こんなに朱い色が出ているのだろう。

形は小ぶりにまとまって、両掌におさまる大きさ。箆跡や作者の手が触れた感じが残っている。

茶道に使うお茶碗というのは、触れて飲んでみないと、あるいはその経験を積まないと、わからないところがあるようだ。特に楽焼を拝見するとそう思う。

私はいつもは均整の取れた薄手の青磁白磁が好きだ。だから茶道の茶碗を見るのは勉強である。

 

さて、名品はまだまだたくさん展示されている。

菊蒔絵大棗(原洋遊斎はらようゆうさい 江戸時代19世紀)、唐物茶入 銘「紹鴎(みほつくし)茄子」(重要文化財 南宋~元時代)、釘彫伊羅保茶碗 追銘「老松」(朝鮮王朝時代16~17世紀)………

この美術館は小規模だけど、見ごたえすごいなぁ。いつもそう思う。

 

私は「富士」という銘がある唐津焼茶碗(江戸時代17世紀)に見惚れた。枇杷色というのか灰ベージュの基調の中で明暗や色味が変化する。茶染みや金継までがデザインとなって見飽きない。

 

さて茶会の雰囲気を堪能したねぇ。2月下旬からの後期展示も楽しみだ。