湯木美術館秋季展「炎が生み出す茶陶の美」

湯木美術館で秋の展覧会が始まっている。
焼締め陶、釉薬をかけずに高温で焼成するやきものがテーマだ。火と土が偶然に産み出す美をじっくり味わえる。

大地や自然をイメージさせるやきものだ。懐かしさも覚える。花入れに可憐な野の花を挿したら、素敵だろうな。
季節にふさわしい展覧会。巣ごもりしている間に夏が終わりかけている。

 

f:id:ivoryw:20210930010827j:plain

 

一番手前にある備前焼のどっしりと重厚感のある花入れ(江戸時代 17世紀)。これでも釉薬がかかっていないの?と思うほど、赤褐色のきれいな肌の色。黄色い自然釉がかかっているところも面白い。
焼締め陶というのは、思いもよらない自然釉の輝きが見られるものだな。

 

紹鷗信楽鬼桶水指(室町時代 16世紀)

大きな水指には、口縁からなんともいえないウコン色の流れが広がっていて、とても印象的だ。炎と火の粉のような模様も見える。

 

信楽蹲(うずくまる)花入 銘「くたふれ物」(室町時代 15~16世紀)

この作品は昨年も拝見して、このような渋い雑器の中に美を見出していることに感動したことを覚えている。

再びこの花入に会ってみると、今回はキャプションから緑色の自然釉に注意を促された。ホントだ。こんなにきれいな自然釉が見えるんだ。違う表情を見せてもらってまた感動。

 

備前筒花入 銘「残月」(室町時代 16世紀)はスタイリッシュな、と表現したいくらい。

地のあずき色に明るい灰色と柿の種のかたちの赤い色がうまい具合に配されて、いかにも雲間から顔を出す明け方の月に見えてくる。竹の根元みたいなわずかな曲がり具合も絶妙。

 

南蛮縄簾水指(東南アジア16~17世紀)

器の半身で色が分かれて渋いツートンカラーになっている。偶然に生まれたものを積極的に評価している当時の人の見方っていいな。

 

はっと目を引くおしゃれな食器の展示もあった。
乾山窯銹絵雪笹文向付(江戸時代 18世紀)

笹にしきりに白い雪が舞い積もる情景をあらわす。器のへりが笹の図柄に合わせてかたどられている。モノトーンの対比が鮮烈だ。

 

貴重な石山切 (重要文化財 平安時代 12世紀 10月17日まで)の展示もあり、思いがけず、非常に美しい料紙を鑑賞することができた。

 

都会の中でタイムスリップして宝物に出会える特別な空間だなぁ。また伺います。