湯木美術館「慶賀と喜びの茶道具~春の風情を楽しむ」

春分の日、湯木美術館へ行った。春季展「慶賀と喜びの茶道具~春の風情を楽しむ」の最終日だった。間に合ってよかった。
いつ訪ねても、こちらの来館客はすごく真剣に鑑賞する方ばかりだな。
私も集中して拝見しよう。

 

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ちょっとだけお茶道具に慣れてきただろうか。いつものように、特に思ったことを記録しておこう。

 

唐物朱輪花盆(中国明時代16世紀)

とても使い勝手のよさそうな、チャーミングな朱漆の盆
無造作なところもあり、それがわびの芸術性に通じるとされた、というようなキャプションがあった。
いっぽうこの作品の写しも並べて展示されていて(玄々斎好 唐物朱輪花盆写し 江戸時代19世紀)、溜というのか、木目がきれいに見える漆の上品な仕上げ。かなり異なる味わいで、それぞれ素敵。
昨年の加彩婦女俑の企画展(東洋陶磁美術館)でも強い印象を持ったが、「写し」・作品の模倣とはとても創造的な試みであると思う。

 

釘彫伊羅保(くぎほりいらぼ)茶碗 銘「秋の山」追銘「老松」朝鮮王朝時代16~17世紀
見込の色変わりが非常に美しい。自然の風景にあるような色彩(油絵のマチエール?)が器を覆っている。
きっと値がつけられないような名品中の名品なんだろう。

 

お茶の茶碗というのは宋時代の天目茶碗とかは別として、お肌がぶつぶつしていたり、しみがあったり、形も歪んでいたりして、古くてよごれていて、使いにくそうに見えるものが貴ばれているようだ。
お茶を嗜む人からは呆れられるだろうが、鑑賞できる素養がないから仕方がないなぁ。
しかし、よいなぁと感じる、じわっと、心に染みてくる、気持ちが静まり、心の居住まいが正される、面白い!と思うこともある。これからも鑑賞させていただこう。

 

明るくポップなデザインの作品もあった。色絵桜図深鉢(仁阿弥道八作 江戸時代19世紀)
江戸時代の作品に「ポップな」という形容は不適切かもしれないけれど、とても現代的なのだ。
乾山窯 銹絵染付絵替筒向付(10客のうち5客 江戸時代18世紀)も楽しい作品。それぞれ違う柄が描かれている。私は柳の柄がいい、とか、勝手に思う。

 

おめでたい文字や図柄、色彩のお茶道具を見せていただいて、この暗い春の中で、少し気持ちが充たされて、明るくなった。