このたびの「天目」展では個人蔵の作品を何点も鑑賞させてもらえる。この展覧会が終わったら、もう二度とお会いすることができないと思うから目を凝らして何度も見つめる。
お茶の器って、居住まいを正して見なければいけないような、敬遠する気持ちがあった。先入観があると素直に感じることの邪魔になる。
ところが、その先入観はあっさりと吹き飛ばされた。黒釉でまとめられたさまざまな顔をした器を楽しんでいる。
なかでも、建窯の禾目天目には一目惚れして浮かれあがったことはすでに書いた。その熱は冷めない。
端正で、重厚でもありながら、煌めいていて他のものに喩えられない。
禾目天目 建窯 南宋時代 12-13世紀
整った器のかたちがきれいだ
禾目天目 建窯 南宋時代 12-13世紀
筋状の斑文がきれいに見える。銀の覆輪が決まっている
禾目天目 建窯 南宋時代 12-13世紀
とても輝いて見える。ふちの部分の黒い斑文がボーダー柄みたいでさらにかっこいい。
キャプションとともに最新の技術で撮影した画像も添えられている。
星空を写したような写真から、ひとつの器の中に、こんな不思議が封じ込められていると感じる。図録を見るとさらに驚き!
12世紀や13世紀に、窯から国宝の油滴天目茶碗のような器を生み出すって、どんなにすごいことだろう。そしてそれを現在まで伝えているって奇跡の連続じゃないかって、思う。
回転する国宝を上から見ることができるのも今だけかもしれないなぁ。
国宝 油滴天目 建窯 南宋時代 12-13世紀