なんだかくたびれて、休みの日に起きられない。耳鳴りとめまいがするよ。年だね。
ちょっとキラキラピカピカするものを見たら元気が出るかもしれない。
肥後橋の中之島香雪美術館へ、「中国の漆器」企画展を訪ねる。
最初に「彫漆(ちょうしつ)」という漆器の技法が紹介されている。
何層も漆を塗り重ねたうえで、文様を彫り込む。最も上に現れた層が赤色のものを「堆朱(ついしゅ)」、黒色のものを「堆黒(ついこく)」というのだそうだ。
堆朱みたいな家具、置物はときどき目にすることがあるかな。
分厚い漆の層のうえに、自在に展開される彫りに目を見張る。
華やかな堆朱の作品は手に取ってみたい。
牡丹文の香合、屈輪文(ぐりもん)の天目台、椿牡丹文の軸筆…光沢が柔らかいから、華やかながら、派手とは違うなぁ。
堆黒の盆2点 今までに見たことのないような漆の黒に心ときめく。
「梔子尾長鳥文(くちなしおながどりもん)堆黒盆」(元時代 14世紀 個人蔵)クチナシの花の中に流れるような鳥の姿が浮かび上がっている。生き生きと動きがあって、伸びやかな彫りに見飽きない。
「蓮池水禽文(れんちすいきんもん)堆黒盆」(明時代 15~16世紀 個人蔵)
蓮華、鴛鴦、牡丹、菊などの縁起が良く美しい文様が堂々と見事に、しかも繊細に彫り描き出されている大型の作品だ。
螺鈿(らでん)や存星(ぞんせい)など、さまざまな技法による宝物が次々と登場する。
精緻、稠密、重厚、豪華、これでもかというほどの超絶技巧に作品全体が覆われている。すごいねぇ。
でも、あっさりとしたものもよい。
「無文(むもん)漆器」
飾りが抑えられて、色やかたちをゆったりと味わえる。
元時代の黒漆稜花(くろうるしりょうか)盆はかたちも色も定窯の陶磁器を思わせる。
南宋時代の黒漆の天目台はつやつやとして、非常に薄づくりの整った姿。
「朱漆黄蜀葵形盆(しゅうるしおうしょっきがたぼん)」(明時代 16~17世紀)
トロロアオイの形をした盆 優美な花びらの曲面に、漆の朱赤が調和した素晴らしいデザイン。後で図録を見たら、背面に咢がかたどってある。魅力的な作品だ。
多彩な技法、多様な表情、漆の世界もまた奥深く心惹かれるものだなぁ。堪能しました。
心の栄養をいただいたから、あと今一息、今年を乗り越えよう。
こちらは東洋陶磁美術館蔵の作品
(左)青磁陽刻菊花文輪花形碗 高麗時代 12世紀 碗の形は黄蜀葵の花をデザインしている
(右)青花黄蜀葵文碗 明時代 15世紀