大和文華館 特別企画展「雪村とその時代」

ずっと以前に呂同賓図(りょどうひんず)と思われるポスターを見かけたことがある。その時私はよく確かめもせず劇画か漫画の一場面かと思ってしまった。
衣を大きくはためかせ、のけぞるぐらいに天を仰ぐ男の姿。奇怪な絵だと思った。しかし、記憶に引っかかっていた。
あの絵はいったい何だろう。一度この目で見ておかねば。
お庭がとても美しい大和文華館へ向かった。

 

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400年以上前、室町時代に生きた禅宗の画僧、雪村周継という人が描いた中国の仙人の姿。
重要文化財!なんと、なるほど。ひとつ知ることができた。
実物を前にして、絵全体を鑑賞すると、「奇怪な」という印象は消えた。
龍の頭を踏んでいる仙人と空高く飛ぶ龍たちによってきっちり構成された絵画だ。

何が起こっているのだろう、と天上の世界へ空想を巡らす。ファンタジー映画を見ているようだ。

 

その隣にある3幅の掛け軸「琴高・群仙図(京都国立博物館蔵 重要文化財)」も仙人を描いている。中央の軸、さっそうと鯉に跨るのが琴高という仙人で、左右の軸からお弟子の仙人たちが彼を仰ぎ眺めている。風になびく衣の様子から爽快感が伝わってくる。仙人たちの表情もとても豊かで面白い。

 

さて、水墨画の屏風といったら、心落ち着く山水などを期待するものだが、「花鳥図屏風(重要文化財)」はちょっと違う印象を持った。
眺めていると画面に取り込まれてしまうようで、何か気持ちがざわざわする。花鳥風月をめでるという感じではない。何といってよいのか、画面が動的とでもいうか…

 

美術品に会って、何、何、これは何?と、言葉にならないざわざわ感を持つことがある。
心地が良くないけれど強烈に惹かれてしまうこともある。雪村さんはちょっと何だか、ざわざわするね。

 

400年以上前に、こんなに独自の力強い表現で個性的な世界が描かれているんだ。
また、ほんのちょっと自分の視野が広がった気がする。


添えられたキャプションの表現もユニークで、作品を鑑賞し、キャプションを読みながら楽しく会場をうろうろした(順路と書いてありますが戻ってうろうろしてしまう)。

 

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