「加彩婦女俑」と「婦女形水注」

東洋陶磁美術館のコレクション展関連テーマ展示「加彩婦女俑に魅せられて」関連イベントとして動画が公開されている。動画を視聴すると、このたびの企画によって制作された作品と元の作品とを、もう一度比べて、確かめてみたくなる。

 

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加彩婦女俑 唐時代 8世紀

 

加彩婦女俑に会いにゆく。
何度も見ているはずだけれど、あらためて、あらためて、見る。
身体と衣装がつくるふくよかな曲線、愛らしいしぐさや表情
婦女俑の魅力はわかっていたつもり…でも、ほかに気が付いたことはある。
身体部分のボリュームの割合が良いのだなぁ。
大き目の髪型から裾にのぞく靴先(小林先生は雲頭履とおっしゃったな)まで、それほど頭でっかちにならずに、立ち姿の均整がとれている。
絶妙の造形だからこそ…何度も会いたくなる。
至高の文化財なのに、自分の身近なもののように愛おしい。

 

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この企画では、現代のクリエイターが新たに制作した作品に触れ、その作品の中に抽出された婦女俑のエッセンスに気づかされることによって、もとの作品を見つめなおすことができた。

これとは違うが、いつもと違うテーマの中で展示されることによって、作品の新たな魅力を知ることがある。
それは、大和文華館の「天之美禄 酒の美術」展で東洋陶磁美術館所蔵の婦女形水注を見たときのことだ。

 

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同じポーズをとる東京国立博物館蔵の五彩婦女形水注と2体並んで展示されていて、顔の表情や着物の柄、小さな足、などを見比べて、楽しむことができる。
華やかな衣装を身に着けた二人の女性がにこやかに踊っているようすから、それを手にした人々の酒を飲む喜びが伝わってくる。

 

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五彩金襴手 婦女形水注 明時代 16世紀

一緒に踊る相方がいて、今日はいっそう輝いていますね。

 

何度も見慣れている作品が、別の美術館に貸出されて、いつもとは違う並びの中にあると、新鮮味が出て、興味が湧いてくる。元の展示が悪いわけでなく、背景が違うと、作品の違う面が見えるし、その作品についてのストーリーが付け加えられて、愛着も増す。

 

さて、東洋陶磁美術館は来年の2月7日以降は改修工事のためしばらくお休みとのこと。
それまで館蔵品の新たな魅力を見出すべく、目を凝らしてみておこう。

 

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黒釉瓢形瓶 高麗時代 12-13世紀 東洋陶磁美術館蔵
和文華館では似た形で美しい黒釉葫芦瓶(朝鮮・高麗時代)を見ました。