湯木美術館早春展「春の茶道具取合せ」

湯木美術館の早春展が始まった。昭和40年早春に湯木吉兆庵(貞一)が開いた茶会の再現展示とのことだ。
入室すると、格式高いお茶会に招かれたような気分になる。

 

 

一筆書きの釜の絵?がある明恵高弁筆の消息(鎌倉時代 13世紀)が掛けられている。
続いて、その茶会の中心となった茶飯釜(和田國次作 17世紀 江戸時代)というご飯を炊くこともできる釜が置かれている。蓋のデザインがおしゃれだ。
この釜を茶事の中心にするとは、どんなことを意味するのだろう。

 

そして、とても抑えた感じがする千宗旦作の竹一重切花入れ(銘「白雪」江戸時代 17世紀)と、明るい枇杷色の器肌に、金継がほとんどデザインとして映える井戸脇茶碗(銘「長崎」朝鮮王朝時代 16世紀)が並んでいる。

 

お茶会に行ったことがなくても、お道具の値打ちがちっともわからなくても、展示室に漂う澄んだ緊張感、上品な華やかさ、時を経たものの重厚さを味わうことはできる。

 

熊野懐紙(藤原雅経筆 鎌倉時代 1,200年頃 重要文化財)という掛物は、後鳥羽上皇が熊野詣をした折に開かれた和歌会で詠まれた歌2首が書かれたものだ。
そのような歴史的イベントから生まれた史料でもある芸術品が、よくぞ残っているものだ。
掛物は美しい表装を見るのも楽しいな。

 

朝鮮王朝時代の名碗がいくつも展示されている。その中で、「由貴」という銘の御所丸茶碗(17世紀)は特に印象に残った。
これは高麗物というんだろうねぇ。お茶の道具って、鑑賞のポイントがいろいろあってむずかしい。
わび・さびの風情を大事にするお茶道具の中には、パッと見て、ん?と思うものがよくある。
私は一種のオブジェのように鑑賞しているなぁ。

 

合間に置かれた酒井抱一筆の短冊(「梅一里」江戸時代 18-19世紀)や鈴木其一作の屏風(「四季草花図」)が日本のお正月らしい色どりを添えている。
砂張写建水(三好木屑作 昭和 20世紀)はてっきり砂張という金属かと思ったら、漆芸品であってびっくりした。

 

喫茶文化とともに中国からもたらされた茶碗などを唐物と呼ぶそうであるが、私は唐物が好きだ。その貴重な唐物が、今日まで受け継がれて一般に見せてもらえるのは「茶の湯」の文化が続いてきたからだろうと思う。だから、茶道に縁遠い生活であっても、少しは学ばなければと思う。鑑賞の仕方が邪道であっても。

 

都会のビルの一室に一歩足を踏み入れると、すごいものが存在している。
驚くほど手軽に本物に出会うことができる貴重な美術館だ。後期展示には「佐竹本三十六歌仙絵 在原業平」がお出ましになる。こちらも是非お訪ねしよう。