「大阪市立東洋陶磁美術館と中国文物展」日中国交正常化50周年記念講演会

休館中の東洋陶磁美術館が「日中国交正常化50周年記念講演会 大阪市立東洋陶磁美術館と中国文物展」をYouTubeで配信している。


その中で小林仁先生が「皇帝の磁器~新発見の景徳鎮官窯」という展覧会の図録について、やきものを学ぶ人の教科書だというような表現をされたので、みちくさ書店という古本屋さんから送ってもらった(とても良い保存状態)。


官窯製品を中心とした景徳鎮出土品の展覧会というだけあって、発掘・修復した作品・製作途中の半製品といえども、技術の粋を集めた最高級のやきものばかりだと思った。
解説も論文も詳細で、展覧会の図録というには専門的。とにかくちょっとすごいな。本当に教科書だ。
近頃手にする図録は、少し物足りないことも多いのだが、研究的に傾くと、今度は辛くなる。読み手は勝手なものだ。

 

青花 蓮池漁藻文壺 元時代 景徳鎮窯 重要文化財 東洋陶磁美術館蔵

 

講演会の中では、趙鴎先生、小林仁先生とも過去に開かれた素晴らしい展覧会の概要を話してくださった。それらの展覧会を見てみたかったという思いが湧きあがる。
二玄社の「耀州窯瓷」で目にしたあの耀州窯の水注(倒置壺)が日本に来ていたのか……

 

青磁刻花 牡丹唐草文瓶 北宋時代 耀州窯 重要文化財 東洋陶磁美術館蔵

 

窯址からの発掘品をもとにした展示ケースの写真も興味深く拝見した。
しかし、実際展覧会を見に行けたとしても、当時深く理解できたとは思えない。
その中でただ一つだけ訪れた「定窯~優雅なる白の世界」展にしても、印象に残ってはいるが、今思えばもっとしっかり鑑賞しておくのだったと、(図録も買ってないし)悔やまれる。

 

白磁刻花 蓮花文洗 北宋時代 定窯 重要文化財 東洋陶磁美術館蔵


やっと展覧会を味わうことができるようになったところでお別れというのは、まことに鈍い私らしい。もっと早く自分の趣味に目覚めておればよかった。恨めし気に美術館サイトの「過去の展覧会」ページを眺めている。

 

ものを見るということに、もともと鑑賞眼のある人はよいが、私の場合は、練習が必要である。何度か同じような作品を眺め、図録を読み、講演会の機会があれば拝聴し、多少歴史などの周辺知識を取り込んで、やっと気がつかなかった美しさや余韻を楽しめる。経験を通して、自分の好みの偏りがわかるし、好みでない作品であっても、良さがわかるようになる。
美術館や学芸員さんの働きかけ・意図を、十全に受け取ることはまだまだであろうが、以前よりマシである。

 

「鑑賞する」という受け身の行為に見えることも、何度も作品を鑑賞し、作品に関する知識を学習することで、その質を変えられると分かったことは収穫だ。

学習することにょって、偏見のフィルターがかかる、先入観を持つ、見もしないでわかったつもりになるなどの恐れもあるが、それよりも積極的に学ぶことで、味わう力が増し、楽しみを深めることができると思う。

 

釉裏紅 牡丹文盤 明時代 景徳鎮窯 東洋陶磁美術館蔵