和泉市久保惣記念美術館特別展「玉石の美~人びとを魅了した石の工芸」

美術館が用意した期間限定シャトルバスに乗せてもらって、3年ぶりに和泉市久保惣記念美術館を訪ねた。
前回も「玉」をテーマにした展覧会だったな、広い敷地建物と見事なお庭、古代中国の石造棺床の展示に驚いた思いがある。このたびは、日本の勾玉も見られるらしい。

 


第1室には、中国古代、新石器時代からの装身具や祭祀に用いられたであろうさまざまな玉が展示されていた。
古代の人々が愛した装身具はとても興味が持てるし、自分も欲しいと思ってしまう。
玉玦(けつ C字形の耳輪)、玉環、玉釧(くしろ 腕輪)、玉飾など いずれも丁寧に磨かれ、均整のとれた形をして、いまだにやわらかな輝きを保っているものもある。

 

玉獣面文琮(そう 新石器時代)、玉斜線文簋(き 商時代)、玉穀粒文璧(前漢時代)など、遥かに遠い古代の神秘に触れることができる。まさに宝物だ。

死者の口に含ませる玉蝉(前漢時代 個人蔵)や手に握らせる玉豚(後漢時代 個人蔵)も印象深かった。

 

和泉市久保惣記念美術館デジタルミュージアムからの引用

左 玉獣面文琮 中央 玉斜線文簋 右 玉穀粒文璧(すべて和泉市久保惣記念美術館蔵)

 

数ある装身具のなかでも、とりわけ佩玉には以前から関心があった。とても精緻な細工がなされてきれいなものだが、どうやって身体につけたのか。中国の時代劇?の画像を見ると、帯から下げているようだ。ちょっと重そうではある。
玉龍形佩・虺形佩(戦国時代 個人蔵)S字型の魅力的なデザインだ。精巧な技術によって切り出され、彫りあげられた作品は思わず手に取って撫でてみたくなる。

 

こちらは2019年東洋陶磁美術館開催「文房四宝」展会場で撮影

龍冠鳳凰佩玉 商時代後期

 

第2室では、日本の勾玉、大珠というものをたくさん見ることができた。
和泉黄金塚古墳出土の勾玉、水晶の作品もあり、貴重な文化財に出会えた。
勾玉ってずいぶんきれいなものだな。そのすっきりとした形とヒスイをはじめとした色あいの美しさを初めて知った。

 

玉は中国で長い間愛され続けているとのこと。第3のテーマで展示されている作品はアクセサリーや置物、鼻煙壺、印石、盆石、硯と、多種多様で石を素材とする工芸芸術の幅広さがわかる。
なかでも玉葵花透彫筆洗(明時代 徳川美術館蔵)という作品の、超絶技巧が生んだ優雅な牡丹唐草文の造形には見とれた。

 

美しい自然の石を見つけて、きっと気の遠くなるほど長い時間をかけて、彫ったり、磨いたりして、作り上げられたもの。神事に用いたのか、ステータスシンボルだったのか。玉には人の願いが込められた芸術の根源みたいなものが感じられる。


貴重な展示に感謝したい。図録はわかりやすく、価格も入手しやすかった。