大阪市立東洋陶磁美術館 第13回 李秉昌博士記念公開講座 「耀州窯青磁と高麗」

1年前に中止になり、楽しみに待っていた第13回イ・ビョンチャン博士記念公開講座(東洋陶磁美術館主催)がオンラインで開催された。


最初は謝明良先生の「北宋営造方式』と高麗青瓷および耀州窯青瓷」

毬文(まりもん)、亀背文(きはいもん)、龍牙蕙草文(りゅうがけいそうもん)などの文様をめぐるお話では、はるかな時間と空間のなかを旅するような気持ちで聞き入った。
営造方式」は第12回の小林仁先生のお話でも取り上げておられた。
獅子、龍、鴛鴦の蓋、蓮弁飾りの炉身・台座をもつ香炉を例に、北宋の製品が高麗青磁に与えた影響を学んだ。
いろいろな国や窯の関連性に気を付けながら作品を見ることもひとつ勉強だなぁ。

 

2番目は禚振西先生の「耀州窯天青釉瓷研究の若干の問題」
五大宋初に耀州窯で天青色の青磁が焼き始められており、胎土や焼成技術、その登場の重大さについてのお話があった。グリーン系ではない水色の釉がかかった碗の画像を紹介されたとき、驚きと称賛の気持ちで見つめた。耀州窯に天青色の青磁が作られていたんだ。

すごーいと思うと同時に、天青色=汝窯みたいに決め付けていた自分を戒めた。
決め付けるとは、パターン化して覚えることだ。耀州窯=オリーブグリーン、刻花、印花→ステレオタイプ

最初はパターン化しないと覚えられないが、それに見方が固まってしまうと、その他のことを見落としてしまったり、軽んじてしまったりする。長い時代にわたって操業されてきた窯場では多様な製品が生産されていたと思った方がいいなぁ。

 

講演3「韓国出土の耀州窯系青磁の様相と性格」
韓惠先先生は韓国で出土または所蔵されている耀州窯青磁を分析された。
すでに独自の青磁生産の技術が確立されていた韓国では、白磁に比べると、耀州窯などの青磁流入量は少なかったが、当時中国で流行したスタイルや生産技術は時をおかずに高麗青磁に影響を与えたのであろうとのお話だった。


また、杜文先生は「神仙怪異と世相-宋・金耀州瓷器の刻印花人物文様分析」と題されて、他に例を見ないほどの耀州窯の装飾文様の豊富さについて、解説された。
飛仙、鮫人、装鬼など珍しい画像が多数紹介され、生活や伝承に結びついていることが感じられる。耀州窯の製品が広く世の中の人々に使われて、親しまれていたことがわかる。


どのお話を伺っても、やきものにまつわる歴史に興味が湧く。やきものそのものの美しさをみる喜びのほかに、歴史を知ることの面白さも、私にとっての幸せであることを実感。講演会に感謝。

 

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 最初に見たとき龍泉窯だって思わなかった