文字や書にも触れてみよう「すぐわかる中国の書」古代~清時代の名筆

書店でたまたま手に取った「書」の本を楽しんでいる。
「すぐわかる中国の書 古代~清時代の名筆 可成屋編」東京美術

最初のページにある「文字を読むべからず」、素人に読めなくて当然であり、それよりも「いいなあ」を感じた瞬間を深めていくことが大事であるという趣旨の言葉に励まされた。

一年前に見た大阪市立美術館北魏の石刻書法もいいなあと思ったし、天平礼賛展では、一字一字心のこもった経文の文字に触れた。秋に訪れた大和文華館の「文字の魅力・書の美」でも書体や文字を記す素材のいろいろな表現を素敵だと思った。


しかし、私には何が書いてあるのかわからないという点で、自分には書を鑑賞する資格がないように思っていた。でも、読めなくてもよいのなら、臆せず、これから書に触れる機会を増やしていこう。

 

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 2019年4月 文房四宝展から 東洋陶磁美術館

 

まず、漢字の五体とその成り立ちについてのわかりやすい解説がとても面白かった。
そもそも五体とは何かな。
漢字の五体  篆書てんしょ(篆刻の文字かな)
       隷書れいしょ(看板とか商標とか画賛にもある)
       楷書
       行書・草書(読めない字だな)
そして、その前に亀の甲羅や獣の骨に刻まれた甲骨文、青銅器に鋳込まれた金文がある。
金文は宇宙言語みたいで格好いい。

 

私は以前からなぜか隷書が好きだ。紀元前後に木簡に書かれた隷書の例が載っていた(「居延漢簡」)。こんな風に竹や木に書いていたんだね。勢いのある肉筆を感じる。
後漢時代の「曹全碑」という隷書の碑文は、とても華やかで整ったリズムがあって美しいと思った。

 

続いて、三国時代から唐時代へと、楷書・行書・草書の完成と確立が紐解かれていく。
篆書・隷書を崩した行書・草書が生まれた後に楷書が生まれたとあり、楷書→行書→草書と思い込んでいた私にとっては、目からうろこであった。

 

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 穆泰墓誌 2017年 唐代胡人俑展から 東洋陶磁美術館

 

宋・元、明・清代の新しく、さまざまな表現についても、鑑賞の見どころが解説されていて、そのなかに大阪市立美術館蔵のものがあった。ひょっとしたらもう目にしているかもしれないが、見過ごしている。
もったいないけれど、私は何度も鑑賞して馴染まないとよさがわからないのだから、見てゆくしかないねぇ。

 

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黒釉 「元祐四年」銘 盤 2020年 天目展から 東洋陶磁美術館


本書のはじめには、かの書聖王羲之顔真卿を取り上げた章立てもあり、歴史も含めて興味深く読めて、多数の名品の写真を味わえる。初心の私にはありがたい本に会った。

 

毎日使っている字のことを、何も知らずに暮らしている。知らないことばかりで我ながらあきれている。

 

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