中之島のバラはもう散り始めていた。
「文房四宝」展を再訪する。
前回見たときに、硯のかたちが豊かで美しいと思った。
天然の石の形や柄を活かしたもの、彫りで飾られたもの、文字を刻んだもの。
存在感、風格、作った人、使った人の思い。
硯の裏面にも魅力が隠されているものだとは思わなかった。
当然にも実物の表と裏を同時に見ることはできないのだけれど。
もう一度、硯のケースを集中的に鑑賞する。
滑らかな石の肌。
もし、触れることができたら、ひんやりとして吸い付くような感覚ではないかしら。
触ってみたい。
墨の香りが漂ってくるようだ。
気に入った文房具を身近において、昔の文人たちが内省的な心落ち着く時間を過ごしているようすを想像する。
今頃の電子端末で心静かなときを過ごすには、ちょっと騒がしい感じがする。
墨、筆、紙、水滴…みどころいっぱいだ。
どうやら私は硬く滑らかなものが好きらしく、玉、硯の次に印石の展示室で長い時間を過ごした。
こじんまりとした展示室は濃縮された別世界
そして、やっぱり締めの中国陶磁
器の正面だけでなく、側面にも美しい柄がみえる。
珍しい特集展はよい。
しかし、私は最近の発掘の知見をもとにした中国・韓国陶磁の企画展も是非見たい。
そのようなものはしばらく開催されないのだろうか。