施設に居た母は入院し、そして天国へ帰った。
戻ってみると、大阪は夏だった。
ふさいでいないで、再開を待ちわびていた東洋陶磁美術館へ出かけようか。
新しいお店や仕掛けが、訪れる人を、待っているらしい。
普通ならとても心躍ることであるが、いまの私は、何よりも、今まで感動を与えてくれたあの作品たちに会って、気持ちの空白を満たしたい。
館内はとても賑わっていて、活気がある。開かれた美術館として、良い雰囲気。
いっぽうでこれまでの心地よい展示空間がそのままであることが、非常に嬉しい。
私は手前の展示室をさっと眺めて、奥の中国陶磁の部屋に急いだ。
久しぶりに来たせいか、あるいは照明が変わったのか、展示ケース内が明るくて、一段と作品が美しく見える。
こんなにやきものがきれいに見えて鑑賞できるところはそんなにないと思うのだ。
すべての作品が宝物であり、輝いている。
あらためて、それぞれの作品の重み、尊い価値が心に染みる。
「やっとお会いできました。」加彩婦女俑に心の中で語りかける。
誰も周りに人がいなかったら、彼女の前にずっと立ち続けていただろう。
あぁ、またここに来て、この作品たちに会えるんだね。
安心感と幸福感を抱いて、館をあとにした。
東洋陶磁美術館があってよかった。
年間パスポートを延長してもらったから、次からはゆっくりと新しい企画を楽しませていただこう。