大和文華館「富岡鉄斎~知の巨人の足跡」没後100年 特別企画展

和文華館の富岡鉄斎展、最終日に尋ねることができた。

 

 

どういうわけか、どれもが好きになってしまう作品ばかりだ。
筆遣いが自由で大胆で、いかにも意のまま、というところが見ている人を絵の中に引きこむのだろうなぁ。

 

たとえばこの寿老人の楽しさはどうだろう。
「寿老図」(大正3年 鉄斎79歳)
濃く太く豪放な筆致でその姿をボンと画面に登場させている。
顔は線描きで簡潔に表されて、眉やヒゲは繊細に添えられている。
どこか温かみを感じさせる神仙の表情。
周りを飛び回っている小さな蝙蝠にもそれぞれ表情がある。
左右に重みを感じさせる桃や瓢箪が配されていて、絵の中に動きがあるところと、どっしりと静かなところが見える。
筆遣い、墨の濃淡、構図、画賛、落款…どこを見ても惹きつけられる。

 

 

「山荘風雨図」(大正9年 鉄斎85歳)
画面全体を斜めに覆う激しい雨の線がぱっと目に入ってくる。そこからザザザっと、暴風雨の音がするのではと思えるくらい迫力がある。
岩や草木が筆の筆致と濃淡だけで、どうしてこんなに的確に、書き込み過ぎずに表現できるのだろう。


「漁邨暮雨図」(大正9年 清荒神清澄寺鉄斎美術館蔵 鉄斎85歳)もまた、素晴らしかった。
風雨に見舞われた海岸べりの漁村の様子が、ほとばしるような筆触で描かれている。
ぐちゃぐちゃになりそうなところだが、白黒の濃淡の調子やにじんでいるところとにじんでいないところの割合が絶妙で、そうはならない。

 

どれほど研鑽を積み、先人の技をまなんで自らのものにし、このような境地に至るものか、想像もつかない。
「知の巨人」といわれるわけが、ちょっとだがわかった。
年をとればとるほど、好き勝手に、壮快に、描かれているようで、見ている側もとても気持ちがよい。

 

とにかく驚嘆し、しかも楽しかった。学ぶと楽しいことが増えるって本当だねぇ。