日経サイエンス「国宝 天目茶碗 光彩の謎」

気になっていた記事があったので、「日経サイエンス」という雑誌を取り寄せた。油滴天目の神秘的な写真(西川茂氏撮影 東洋陶磁美術館収蔵品画像オープンデータ)が表紙を飾っている。いいねぇ。

 

「美を科学する」という特集の中の「国宝 天目茶碗 光彩の謎」という記事を読む。東洋陶磁美術館の小林先生が執筆に協力しておられる。何か新しいことがわかったのかな。

 

 

科学誌だけあって、雑誌に掲載されている写真がいずれも細部まで鮮明で目を奪われる。

天目の特集記事でも、作品や茶碗表面の微細構造などの写真がすばらしい。

特に「杭州で最初に見つかった曜変天目の破片」が大きく掲載されていて、オーロラのような輝きがよく見えることにはっとした。以前もう少し小さい写真を見たことがあったが、あらためてその曜変の豪華さに驚かされた。

 

さて、中島林彦という編集部の方が書かれたその記事は、天目についての研究の始まりからこれまでの経過のほかに、天目とは何か、天目に関わる歴史まで、かいつまんで記述してくれているので、いままで興味のなかった人でも、スッと頭にはいっていきそうである。

そのうえで、曜変天目や油滴天目にみえる光彩が物体の表面の微細構造によるものではないかという最近の知見について、読者が理解しやすいようにまとめてくれている。

私が理解できたかは別にして…

 

すごいなと感じたのは、小林先生が構造色に由来するであろう油滴天目の輝きをもっと知るために撮影手法を変えたという記述であった。

2020年に東洋陶磁美術館で「天目~中国黒釉の美」展が開かれた。その画集は西川茂氏によって、特別な機材で特別な手法で撮影されたもので、陶磁器の新たな美しさを見えるかたちにしてくれた。私は画集を手にしたとき、ただきれいだな、こんなふうに見えるんだなと感心するにとどまった。しかし、なぜこのようなことをするのか、それ以上の意図がわからなかった。

 

 

今回この記事を読み、その写真が光学の研究につながり、天目の研究がさらに進んでゆくということを知り、やっとなるほどと腑に落ちた。

天目の表現しがたい美しさが、解き明かされる過程を窺い知ることが出来て、価値ある記事であつた。

 

※タイトル写真は天目展で禾目天目に添えられていたパネル写真の一部