柴窯とは2 

柴窯とは 

「幻の至宝 柴窯発見」(對中如雲著 祥伝社)によって教えてもらったことをまとめておこう。

歴史的文献によるとして、

中国 五代十国時代 後周(951年~960年)の皇帝柴栄(さいえい)がその地位にあった954年から959年までの5年間だけ焼かれていた皇帝のための窯(官窯)

 

1,000年以上も前に作られ、窯が開かれた期間も短期間であるため、希少性が高い。

完成品も窯跡も発見されていない究極の至宝

明代の文献では、宋代の五大名窯よりもさらにワンランク上と位置づけされる。

 

なんと、あの汝窯より上なんて、どんなやきものなのか想像もつかない。

 

この本では、中国陶磁史についても一般向けの読み物として、わかりやすく書かれていて、少し私の頭の中の整理もできた。東洋陶磁美術館で展示された作品を思い起こしてみよう。

 

宋代の五大名窯

汝窯(じょよう)北宋汝窯水仙盆」展の記憶はいまだ鮮やかだ。

 

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館蔵品と特集展の特別出品

南宋官窯(なんそうかんよう)八角瓶(はっかくへい)

たっぷりとかけられた釉が何とも言えない作品

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哥窯(かよう) 非常にたくさんの貫入(かんにゅう)がはいった管耳瓶(かんじへい) 不思議な感じがする作品

 

鈞窯(きんよう) 

水色のなかに紫の斑が浮かんでいる澱青釉紫紅斑杯(でんせいゆうしこうはんはい)

月白釉碗(げっぱくゆうわん)淡い水色の朝顔形の碗 この間の平常展にはなかったような気がする。次に展示されたら、ゆっくり見ておこう。

 

定窯(ていよう)薄づくりの優雅な白磁

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刻花牡丹文瓶 刻花蓮花文洗 印花花喰鳥文盤

深みのある色 柿釉碗 これも定窯ですね。

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 五大名窯のほかにも宋時代には、龍泉窯、磁州窯、建窯とまだまだ名窯があるのだ。

龍泉窯(りゅうせんよう) 自分の中の青磁のイメージとはまさにこんな色合いだった。

(実物とこの写真はだいぶん色が違いますが)

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長頸瓶 銘「鎹」  鳳凰耳花生

磁州窯(じしゅうよう) 掻き落しという凝った技法

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緑釉黒花牡丹文瓶  黒釉刻花牡丹文梅瓶

建窯(けんよう) 東洋陶磁美術館の建窯といえば国宝油滴天目茶碗

耀州窯(ようしゅうよう)

東洋陶磁美術館の顔のひとつ 刻花牡丹唐草文瓶

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大雑把にだんだん覚えていける気がするね。よかった。今日はここまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伝説の柴窯とは?

伝説の柴窯(さいよう)とは? 

これからじわじわと、わかってくるだろうと、のんきに構えていたところ、一週間もたたぬうちに、期せずして、私の理解を深めてくれる著作に出会った。

そう、ジュンク堂書店でさんざん時間をかけて探し物を見つけた後、疲れてレジ近くの棚の前をぼうっと眺めていたら、誰かが私のために並べてくれたかのように、目の前に置かれていた。

 

「幻の至宝 柴窯発見」(對中如雲著 祥伝社 平成18年発行)

著者は知人から託された一つの青く美しいやきものの正体を解き明かそうとする。

はたして伝説の柴窯の至宝であるのだろうか。

八年もかけた研究の過程なのであるが、歴史ミステリ仕立てになっていて、陶磁器に興味のない人でも楽しく読み進めることができる。

内容の面白さに加えて、私のような初心者にもわかりやすく書かれているので、一回目は大筋を追って一気に読み終えた。

 

今度はもう一度丁寧に、細部をたどりながら読み直しはじめている。

というのも、この本は、その問題のやきもの「青百合花瓶」がどこで生まれたものなのか、という本筋もさることながら、柴窯とそれに続く中国宋代の名窯についての手引書として読むことができて、私にはありがたいのである。

 

そもそも「柴窯」とは最高の美しさを讃えられ、奇跡とまでいわれている名窯でありながら、陶片すら出てきていない幻の窯であること、が呑み込めた。

これだから素人はいいのである。そのように有名なことでも知らずにいるから、どんどん面白くなる。

しばらくの間、青く美しいやきものの世界に浸って現実から距離をおくことができそうだ。

 

 

 

 

充実した夏が終わった

夏休みが終わった気分だ。

この夏はたびたび東洋陶磁美術館に足を運び、館蔵品を集中的に鑑賞した。

短期間に何度も見ることによって、いくつかの作品の姿を自分の記憶に焼き付けることができたと思う。

贅沢な夏だった。

 

写真撮影も許可されていたので、忘備録をつけておこう。

 

と、その前に次回展覧会の案内をいただいたので、確認。

 

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9月23日(土)~12月3日(日)

イセコレクション 世界を魅了した中国陶磁

 館蔵品の兄弟姉妹のような作品も見られるのかな。

 

さて、館蔵品のおさらい(だいぶん実物と色は違いますが)

まず、韓国陶磁 (70点以上展示されていて、かなりのボリューム)

 

高麗青磁 12世紀~13世紀 うわぐすりの色が美しい。

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青磁印花夔文方形香炉(せいじいんかきもんほうけいこうろ)

青磁陰刻蓮花文三耳壺(せいじいんこくれんかもんさんじこ)

青磁象嵌蓮唐草文鶴首瓶(せいじぞうがんはすからくさもんかくしゅへい)

 

粉青粉引瓶(ふんせいこひきへい)16世紀

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 青花窓絵草花文面取壺(せいかまどえそうかもんめんとりつぼ)18世紀

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鉄砂虎鷺文壺(てっしゃとらさぎもんつぼ)17世紀

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イ・ビョンチャン博士のコレクションも60点ほど 展示されている。

 

青磁象嵌雲鶴文碗(せいじぞうがんうんかくもんわん)12世紀

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青磁陰刻花文唾壺(せいじいんこくかもんだこ)12世紀

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次に中国陶磁 50点弱(平常展)

緑釉 楼閣(りょくゆうろうかく)2~3世紀

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加彩 婦女俑(かさい ふじょよう) 8世紀

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青磁 天鶏壺(せいじてんけいこ) 6世紀

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三彩貼花宝相華文壺(さんさいちょうかほうそうげもんつぼ)7~8世紀

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白磁刻花牡丹文瓶(はくじこっかぼたんもんへい)10世紀~11世紀 定窯

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黒釉刻花牡丹文梅瓶(こくゆうこっかぼたんもんめいびん)11世紀~12世紀磁州窯系

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 青花牡丹唐草文盤(せいかぼたんからくさもんばん)14世紀 景徳鎮窯

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 徐々に言葉などを覚えてきている感じがある。

 

特集展の特別出品 汝窯青磁 盞 11世紀~12世紀

 この展示を最後にもうお目にかかれないかもしれないとのこと。貴重なものを見せていただきました。

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充実した夏が終わり、すぐにまただらだら、ごろごろの日曜日に戻る、かな

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館蔵品を見る楽しみ3(東洋陶磁美術館)

日曜日に東洋陶磁美術館のアフタヌーンレクチャーを拝聴。

 

特別出品の2点(青磁盞、青磁単柄洗)をはじめとして、北宋から金時代の中国陶磁館蔵品のなかから、現在展示されている作品の魅力について解説があった。

 

鑑賞のポイント・作品にまつわるエピソード、さらに中国の窯跡の紹介もあり、自分が実際に鑑賞した記憶を重ねることで、館蔵品について理解を深めることができた。ありがとうございます。

 

(平常展期間中写真撮影が許されているので撮らせてもらったが、一度フラッシュが発光してしまい、冷や汗をかいた。)

 

(当然実物はこんなものではありません。ぜひ、本物を味わってください。)

 

いくつか自分の書いたメモを見直してみる。

 

青磁八角瓶 南宋官窯 12~13世紀 釉薬が厚くかけられている、底部に清朝宮廷の整理番号とされる751号のシールがある:そう、本当にとろっとした感じが何とも言えない宮廷の宝物だなぁ。

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私が大好きな白磁刻花蓮花文洗 定窯 11~12世紀 光を通すほど非常に器体が薄いので、学芸員さんでも持つときに緊張するとのこと。:そのような華奢なものが伝えられていることが素晴らしいと思う。見込みが見たくて、のぞき込んでしまう。美術館のホームページ収蔵品紹介の写真で満足しよう。

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青磁刻花牡丹唐草文瓶 耀州窯 11~12世紀 岩崎小弥太氏旧蔵:きりっとひきしまったデザインといい、彫りといい、オリーブグリーン色のうわぐすりの感じといい、どんな人(あるいは人たち)がこのようなものをつくったのだろう。

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 などなど何点紹介されただろうか。時間があっという間に過ぎた。

 

そして、 またまた、いっぱい知らない言葉が出てきた。なかでも、次の3つの言葉は印象に残った。これから覚えておきたい。

「伝説の柴窯(さいよう)」

「秘色」

「越窯 えつよう」

越窯についてはあらためて館蔵品をよく見てみようと思う。楽しみがさらに増える。

 

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アフタヌーン・レクチャーが待ち遠しい(8月27日 東洋陶磁美術館)

27日の日曜日、東洋陶磁美術館で主任学芸員の方のアフタヌーン・レクチャーがある。

「宋磁の美ー中国宋時代のやきものをめぐって」ありがたいなぁ。絶対行かなくては

ちょっとでも講義についてゆけるように、図録などを拾い読みする。

 

と、いってもことばが難しいので、仕方なく拾い読みになっている。何しろ、普段目にすることのない漢字がどっさり現れる。中国の地名、歴史、陶磁器の種類に関する言葉、作陶方法を表す言葉などなど。

恐れをなしてあっさり退散。要約したページを読んで頭にいれる。

 

作品名もなかなかに手ごわい。例えば「せいか れんちぎょそうもん つぼ」音読するとなんのことだかわからない。元時代の染付の大きなつぼで、泳ぐ魚や蓮の花が描かれている。あまりにも見事すぎて、圧倒されるが、作品名が覚えられなかった。(「青花 蓮池魚藻文 壺」重要文化財

 

素人の私には謎がいっぱいである。「青磁 せいじ」と名のつくものはたくさん展示されているのだが、その肌の色は灰色やオリーブグリーンなどさまざまで、私は緑がかった青だとばかり思っていたから最初は驚きであった。

 

(一見したところ、ある種の大理石の建材を思い起こさせる:すみません)哥窯(かよう)の茶碗にいたっては、どうしてこれが青磁なの、と思わずにいられない。うわぐすりや用土や焼成温度といったことで分けられるということだろうか。

 

素人だから、自由に気ままに、作品を鑑賞し、心が満たされる空間を味わっている。

それで充分なのだけれど、好きなもののことは知りたくなるもの。恐竜を愛する子供のようになりたいと思う。

 

もし、東洋陶磁美術館検定なるものがあったとしたら、まあ3点ぐらいはとれるかもしれない。これからたっぷりと謎に浸って、ゆっくりと学んでゆこう。

 

 

 

 

東洋陶磁美術館 館蔵品を見る楽しみ2

虫網を持った夏休みの子供のように、今日も東洋陶磁美術館へ。館蔵品をじっくり見るのに良いシーズン。

 

中国陶磁の大きな展示室と展示室の中間に、「自然採光展示室」という外の光をとりいれて、作品を鑑賞できる部屋があり、そこにゆったりと名品が並べられている。

 

今は「青磁 水仙盆すいせんぼん」、「青磁 鳳凰耳花生ほうおうみみはないけ」、「青磁 八角瓶はっかくへい」、「飛青磁花生とびせいじはないけ」、「油滴天目茶碗ゆてきてんもくちゃわん」の5点だ。(国宝2点、重要文化財1点を含む ご興味のある方は東洋陶磁美術館ホームページ収蔵品紹介をご覧ください)

 

古代の貴人しか見られなかったものを、間近に見る事ができる幸せ。この美術館があるから大阪に住んでいてよかったと思うほどである。

 

さて、専門的なことはわからないので、ただ作品を見て、自分なりに美しいとか面白いとか感じるだけなのであるが、ことに好きなものはある。

 

定窯(ていよう)白磁の洗(せん)と瓶(へい):白いボウルというか洗面器のようなものと花びんのようなもの この2点は必ずしっかり見て帰る。

 

2013年に開かれた定窯の窯址発掘の展覧会とそれにちなんで同時開催された塚本快示特集展で、定窯白磁にすっかり魅了され、それとともに館蔵品の値打ちが少しわかった気がした。それ以来、多少どこの窯(かま)とかいつの時代のものかを気にするようになっていっそう興味が増した。

 

前述の洗と瓶は、温かみのある白さ、どうやって焼いたのかと思うほどの器の薄さ、優雅な彫刻など、定窯の白磁の姿を1000年以上も変わらずに、壊れずに伝えてくれる。

しかも、そのまま野菜を盛ったり、花を活けたりしても、何の違和感もなく現代生活に合いそうだと私は勝手に思っている。

 

見れば見るほど、知れば知るほど興味は尽きないのだ。夏休みの宿題は終わらない。

 

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東洋陶磁美術館 館蔵品を見る楽しみ

東洋陶磁美術館の展示が替わったので、さっそく訪問。華やかな特別展(今年はハンガリーのヘレンド 7月30日に終了)はもちろん素晴らしいのだけれど、私としてはいつも展示されている館蔵品がみられないとちょっと寂しい。

 

今日からは平常展プラス特集展、そして金子潤という作家の方の受贈記念の展示だ。

この中の特集展「宋磁の美」に北宋汝窯水仙盆と同時に展示された汝窯青磁の茶碗(盞)がまた展示されている。

水仙盆に勝るとも劣らない優美な色、形、あの茶碗にまた会える。

 

東洋陶磁美術館の順路としては大きな展示室と3階を見てから、特集展示室にたどり着く。いつもこの順路に従うと、もうほとんど力尽きてしまうので、まだ人がまばらなのを幸いに、まっすぐ、特集展示室に向かい、最初に汝窯の茶碗をゆっくりと鑑賞した。

 

完璧な形、薄くかけられたうわぐすりでこの肌の色(天青色)、900年も昔にこのような器がつくられ、しかも伝えられている奇跡(まあ奇跡といえば、この美術館の中に奇跡の展示品はいっぱいある)。

お目当てのものをしっかり堪能したのち、順路に戻った。

 

韓国陶磁をいつもより時間をかけて見る。

私は見どころ満載で順路の一番最後にある中国陶磁の展示室が好きで、韓国陶磁の展示を見るのを早めに切り上げて先を急いでしまうことが多い。

今日はゆっくり鑑賞し、高麗青磁などをあらためて美しいと思った。

 

中国陶磁の展示室では、必ず唐時代の女性のお人形(俑)に挨拶をする。彼女はいつもターンテーブルの上に立ち、終日ゆっくりと回転している。おかげで、彼女をどの角度からも眺めることができる。そして、どの角度からみても均整の取れた美しい立ち姿に感動する。

 

久しぶりに宝物を鑑賞し、1階の喫茶室でばらのソフトクリームをいただき、眼福、口福の時間を過ごした。