東洋陶磁美術館 特集展「中国陶俑の魅力」について

美術館に行くときはうきうきする。作品とデートだからね。

このたびの唐代胡人俑展では、俑たちに勝手なあだ名をつけて、ひそかな会話を楽しんでいる。

また来たよ。

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加彩胡人俑

 

さて、今日は東洋陶磁美術館で唐代胡人俑展と同時に開かれている特集展「中国陶俑の魅力」について記録しておきたい。

 

まず、とても小さくて愛らしい3人の侍女の俑。 

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加彩 侍女俑 持箕侍女俑 楽女俑 北魏時代6世紀

髪型がいかにも中国の少女らしい。日常生活のいろいろな仕事をしてくれる俑たち。

 

きれいな釉がかけられた俑もある。こわい顔つきなんだけれど、でもどこかユーモラスな胡人俑とお墓を守る鎮墓獣(ちんぼじゅう)

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三彩胡人俑 唐時代 7世紀
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三彩鎮墓獣 唐時代 7世紀

見事な大型の駱駝や天王俑(てんのうよう)も展示されている。

天王俑とは鎮墓獣と同じようにお墓を守るためにおさめられた武人の像とのこと。

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三彩 駱駝 天王俑 唐時代8世紀

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  加彩天王俑 唐時代 8世紀 とてもかっこいい神将像だ。

 

そういえば、「唐代胡人俑」の図録では、今回実物の展示はなかったが穆泰墓から発掘された一対の鎮墓獣と一対の天王俑の写真も載っている。これがまたテレビアニメのキャラクターみたいというか、非常に斬新でかわいらしい。古代のデザインってすごい。

 

続いて、高貴な雰囲気の2点。貼金の残りなどが見てとれて、きっと華やかに彩られていたのだろう。

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加彩騎馬女俑 唐時代 8世紀

 片目をつぶった鷹匠 

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加彩騎馬鷹匠俑 唐時代 8世紀

俑にはその時代に流行ったモノ・コト、ファッションが垣間見えて面白い。

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左 緑釉加彩楽女俑 隋時代 6~7世紀
右 黄釉加彩侍女俑 唐時代 7世紀

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左 黄釉加彩騎馬女俑 唐時代 7世紀

右 加彩侍女俑 唐時代 8世紀

 

くるくるの巻毛とこの顔の表情、どこの国の人だろう? 何をしているのかなぁ

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黄釉加彩巻髪俑 唐時代 7世紀

 

あまりにも胡人俑から受けた衝撃が大きすぎて、この特集展を素通りするところだった。

 穆泰の俑たちに心を奪われてしまって、それ以外のものが、おとなしくてつまらないもののように見えてしまったのだ。

 

 けれど、あらためてひとつひとつの俑を眺めていると、タイムカプセルが開かれたように、当時の人々の生活や、風習が偲ばれる。

 

広大な中国の長い長い歴史のなかで、お墓という特別な場所に存在した「俑」というものの世界をほんの少しだけのぞかせてもらったようだ。

 

貴重なものに出会えたことに感謝

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唐代胡人俑展~見れば見るほど素晴らしい

年末年始は久しぶりに宮城谷昌光先生の小説を読みふけった。

 読み始めるといきなり、はるか遠い昔、古代中国の世界にほうりこまれる。あの感じは、唐代の俑たちに出会ったときの感覚に似ている。

 

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1300年も前に作られたという俑たちの前に立ってみると、比べるもののない造形表現に魅せられて、胸騒ぎを覚えるような、酔ったような夢の時間が過ぎる。

 

一瞬をとらえた身体表現、視線さえ感じさせる豊かな表情、着衣のみならず体毛まで描きこまれた細かい筆遣い…とにかく実際に見ていただくしかない。

 

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しかも、東洋陶磁美術館の展示室は、美しい光の中でゆったりと作品が立っていて、展示空間としても素晴らしい。

 

 まあ、しかし、ここでちょっと夢から醒めてこのたびの展覧会のキーワードを図録「唐代胡人俑~シルクロードを駆けた夢」から教えていただこう。 

 

  :来世でも生前と変わらぬ生活を送るようにとの願いをこめて、死者とともに墓に埋葬された副葬用の人物像のこと。春秋戦国時代から明清代まで用いられた。

 

胡人:中国の北方や西域、南方などの非漢民族の人々を指す総称。

それぞれの胡人俑の具体的な民族や出身地などの特定は困難とのこと。

 

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外見や習俗が漢人と異なっていることで、胡人はおおいに当時の人々の関心を引き、俑においても胡人が生き生きと写実的に表現されたのではないかと推論されている。

  

なるほど、図録にもいくつもの(穆泰墓以外の)胡人俑の写真が掲載されている。ネットの画像もさまざまにあって興味深いが、このたび展示されている俑たちほど、秀逸なものは素人目にもなかなか少ないのではないかと思われる。

 

穆泰墓甘粛省慶陽市慶城県で2001年4月に基礎工事の際に発見された唐の游撃将軍穆泰(ぼくたい)の墓。開元18(730)年に葬られた。

 

墓室は正方形で、一辺の長さは3.54メートル、出土文物は加彩陶俑、動物模型、陶器、墓誌、銅鏡、開元通宝 89点(発掘当時の報告)

当時の都、長安からはそれほど遠くないところ

 

墓誌:出土した墓誌から、墓の主が開元17(729)年に70歳で亡くなり、開元18(730)年に葬られた游撃将軍穆泰であることがわかった。

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四角い身と蓋でできたやきものの身のほうの内側に、白い加彩で文字が記されている。最後の2行が書ききれなくて、蓋との接地面にまではみ出ているって、ちょっと面白い。

 

穆泰について:穆泰の一族は鮮卑族(遊牧騎馬民族)出身ではないかという説がある。駱駝や馬が身近にいる生活とつながりが深そうだ。

 

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従五品下という身分で、それほど高い身分ではないのだそうだ。

 お墓の大きさこそこじんまりしている感じだが、身分が高くない人のお墓からこんなに素晴らしい芸術的名品ともいうべきものが出てくるとは、何と不思議なことだ。

 

見るのも、知るのも楽しい。次の連続講座第2回「中国陶俑の世界」も待ち遠しい。

 

展覧会が終わってしまえば、このようなものには、もう二度と会えないだろうなぁ。

 

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 「陶説」12月号 美術館で買うことができました。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

唐代胡人俑展~胡人俑の魅力につかまってしまった!

胡人俑の魅力に囚われてしまった。

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この俑の前に立つと、今にもこちらに向かって迫ってきそうなちょっと怖い感じがする。

最初に迫力ある表情に注意が向けられるが、少し引いて見ると、本当に着衣の下に生身の人体が存在するかのような動き、着衣のゆれなどがあったかのような、錯覚を覚える。

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 胡人俑たちの眼差しの鋭さにも、惹きつけられる。

多くの俑が何かを注視しているようにみえる。

視線の先が駱駝や馬であれば、安心して眺めていられるのだが、こちらをにらみつけているような俑もある。何を見ているのか、何をしているところだろう。

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加彩胡人俑

いっぽう優しく、涼やかな眼差しを向けてくれる俑もある。女性の俑たちだ。

 

昨日のイブニングレクチャーでは、これらの女俑も、展覧会の見どころのひとつであるという解説をいただいた。 

全くこれらは素直に美しいなあ。

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加彩女俑

何とも優雅で華やかな姿、おしゃれな着こなし。髪型、お化粧、身に着けているものをひとつひとつ丁寧に見てゆくのも楽しい。

 

唐代美人のお顔に作られているのだろうけれど、けっこうそれぞれ違って見えるので、ひょっとしたら、モデルがあってその人に似せて作ったのかもしれない。

 

女俑に限らず、胡人の身なりもとても凝っていておしゃれだ。

 

帽子、上衣、ベルト、ポシェット、ブーツの詳細まで彩色されていて、粋な着こなしに目を見張る。裏地やふち飾りなどの美しい彩色や文様を効果的にのぞかせている。

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加彩胡人俑

 

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造形・ファッション・当時の人々の暮らしとか、いろいろと味わえる体験だ。

 

駱駝と俑のセットで2体が作り出す緊張感ある作品も素敵だ。

 

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加彩胡人俑・加彩駱駝

前裾をまくり上げた朱色のパンツ姿の俑は、個性派ぞろいの中にあっては、比較的にシンプルでけれん味がなく、一生懸命駱駝を牽いている。

駱駝のほうはちょっと不満げで、彼を睨んでいるようにも見える。

男と駱駝の力強い綱引きの場面が目に浮かぶ

 

夜間開館に(午後7時まで)東洋陶磁美術館を訪ねるのは初めてである。

 

閉館したのちは、映画「ナイトミュージアム」のように俑たちがにぎやかに騒ぎ出すのではないかと心配である。

 

それこそが、これらの俑を作った人たち、俑を主人とともに墓におさめた人たちの願いであったかと空想している。

 

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東洋陶磁美術館 唐代胡人俑展が開催!

心待ちにしていた東洋陶磁美術館の唐代胡人俑展が始まった。

 

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何というものだろう。この造形は

私の乏しい経験の中では、見たことがない。

単にやきものの人形といっては足りない。彫刻作品にも似ているが、彫刻ではないし、とにかく今までの私のポケットには収まりどころがない。

 

やきものや人形としてではなく、人間として見てしまうのだ。

それら(彼ら)は活力にあふれていて、魅力的で、怪しげでもあり、恐ろしげでもある。

何とも心がざわついて、矯めつ眇めつ、何度でも眺めてしまう。

 

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「すごいものを見せてもらっている。」そう感じた。

撮影が許可されているので、多くの方が集中して写真を撮っておられる。

素描をしている方もいた。そう、絵が描けたら、本当に描きたくなる題材だ。

 

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それにしても、このような活気に満ちた俑たちをお墓に連れて行ったということは、当時の人々が死後にも、現世と同じような暮らしが続くことを真剣に願っていたということだろうか。

死後は静かに眠るというイメージではなさそうだ。

「俑」についてもっと知りたくなる。

 

特集展示室には    特集展「中国陶俑の魅力」として、館蔵品の俑が展示されている。

こちらは愛らしい作品がいくつもあるのだが、胡人俑がもたらす強烈な印象に比べると、ずいぶんおとなしく見える。

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 この騎馬女俑もとても端正で優美で魅力的だと思うのだが、あの胡人俑たちが醸し出す魅力(魔力か)には分が悪い。

 

 わくわくすることはほかにもある。

展示ケースのディスクリプションを読むのをいつも楽しみにしているのだが、このたびはお茶目な一言が添えられていて、いっそう楽しい。

 

そして、図録がこの展覧会の内容の厚みを倍にしてくれそうだ。

素晴らしい写真と丁寧な作品解説のほかに、専門家の手による論文が載せられている。

本当に幸せ。

 

今日のところは第一印象。

私はのみこみが悪いので時間をかけて作品を見ないと、作品との距離が縮まらない。

何度も足を運ぶことにしよう。

 

うれしいことに主任学芸員の方の連続講座も開かれる。

この冬は胡人俑の世界に浸って、心ざわつかせて過ごせそうだ。

 

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次の展覧会が近づいてきた!

風邪が治ったと思ったら、また風邪を引いた。出不精、ものぐさが悪化する。

悪しき習慣から脱却しようと試みると、決まって1歩前進3歩後退。やれやれ

 

その間にもう師走が近づいてしまった。

東洋陶磁美術館の次の展覧会ももうすぐだ。早く風邪をすっかり治さなければ。

 

次の「唐代胡人俑」展は何だか異色というか、愉快そうだ。

 

唐代の俑といえば、館蔵品の可憐な女性像とか

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加彩 婦女俑 唐時代 8世紀前半

気品ある宮廷の女性とか
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加彩 宮女俑 唐時代 7世紀

 

あるいは

イセコレクションの中の男装の麗人 のように

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加彩 女俑 唐時代 8世紀

雅なイメージを持っていたのだが、

 

今度やって来る胡人俑は、予告動画や広報チラシを眺める限りではだいぶん違う趣だ。

 

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表情がとても豊かで、一瞬を捉えたポーズが決まっている。

劇画調というか、漫画チックでもある。

そして、古代のシルクロードの空気がいっぱい漂っている。


こんな人形たちがお墓に一緒に葬られたら、あの世も賑やかそうな感じがする。

どのような思いで、俑がつくられ、埋葬されたのだろう。

あるいはその時代のその地域の流行なのだろうか。

 

どんな技法で制作されたのだろう。

型にはめたのか、一体一体オリジナル?

美しい彩色がいまだ残っているが、出来上がった当時はどんな鮮やかな色をまとっていたのだろう。

 

同時に「中国唐俑の魅力」特集展もある。いつもはしまってある館蔵品が見られるのも楽しみだ。

そういえば、今度は鈞窯の月白釉碗に会えるかな。

あれやこれやと、妄想がふくらんでいくなあ。

さっさと風邪を治して年末の雑事を終わらせなければ…

 

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イセコレクション展から学ぶ 4日目つづき

このたびの展覧会の作品は、いつもならイ・ビョンチャン博士のコレクションと日本陶磁の展示室になっている2部屋に展開されている。

 

日本陶磁の展示室は座敷で鑑賞することをイメージして展示ケースが低い。おかげで、器の見込(碗や皿などの内側部分)を見る事ができる。

 

通常の展示だとなかなか見込が見えなくてガラスに張り付いて背伸びしてのぞき込むことになる。ガラス汚してごめんなさい。

 

外側の胴まわりと見込を両方よく見せる展示ケースは限られているので仕方がない。

 

見込が見えるいっぽうで、低い展示ケースの中にある小品の器側面を見るのはなかなか苦労する。

 

清時代の美しい碗側面を見ようとして私も含め何人かのひとが、身体を横に曲げる、あるいはしゃがみ込むなどして鑑賞していた。傍から見たらおかしな光景である。

 

さて、大詰め清時代である。技術の発達の上に花開いた作品を見ていこう。

 

素三彩花蝶文鉢 清時代 康煕在銘(1662-1722) 景徳鎮窯

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素三彩とは素焼きした磁胎素地に、緑、黄、紫などの鉛釉系の色釉をかけわけ、低火度で再焼成したもの。

花の模様の下に龍の文様が刻まれている。花蝶模様と龍の文様に関係があるのか、ないのか、美しくも不思議な印象を与える碗である。

 

 

釉裏紅団鳳文碗 清時代 康煕在銘 (1662-1722) 景徳鎮窯

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 ◎釉裏紅(ゆうりこう): 器表に酸化銅を含んだ顔料で絵付けをする技法。銅は均一の発色を得ることが難しい。 

 清時代には安定した美しい発色と緻密な文様表現が可能になった。

 

館蔵品ではこんな大きな盤もある。

釉裏紅牡丹文盤 明時代 洪武(1368-98) 景徳鎮窯

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 次はこの展覧会のクイーン

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粉彩花樹文瓶 清時代 雍正在銘(1723-35) 景徳鎮窯

 ◎粉彩:磁器の釉表に不透明の白色顔料で文様の下地を描き、その上にいろいろな顔料で絵付けをして、再度焼成したもの。ヨーロッパの無線七宝の技術を応用して考案された。

 

 構図も色彩表現も、陶磁器に描かれた文様というより絵画のようで、どこか洋風でもある優雅な作品。

 

さて、次は豆彩

淡い青緑色(豆色)の上絵の具が美しいことから豆彩の名がついたという。

豆彩瑞獣波濤文盤 清時代 雍正在銘(1723-35) 景徳鎮窯

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 次の盤は明時代の黄釉青花盤によく似ているけれども、酸化アンチモンが呈色剤に使われていてもっとレモンイエローに近い。

黄地青花桃樹文盤 清時代 乾隆在銘(1736-95) 景徳鎮窯

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次は夾彩 

 粉彩と同様の上絵の具を用いて、白磁の器全体を余白を残さずに地色や文様で塗り詰めたもの。

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夾彩八吉祥文觚形瓶 一対 清時代 乾隆在銘(1736-95) 景徳鎮窯

 

まだ続く。

これはいったいどうやってつくったのだろう。現在ではパール光沢のある食器はよく目にするけれど
真珠釉暗花壽字龍文碗 一対 清時代 乾隆在銘(1736-95) 景徳鎮窯

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自分としては白磁を見ると心が落ち着く感じ。

 

最後にこの作品を見て、この展覧会からの学習を終了としよう。

茶葉末双耳壺 清時代 嘉慶在銘(1796-1820) 景徳鎮窯

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鉄を呈色剤にした失透性の釉を高火度焼成することで、茶葉の粉末のような発色を見せる。

これは固体ではなく中に液体が流れているのではないかと思われるような器の肌

陶磁というのは奥が深い。

 

すごいコレクションだねぇ。中国陶磁の歴史を名品を通して、学ばせてもらいました。

素晴らしいものを惜しみなく見せていただいたことに感謝。

今日はここまで。

 

 

 

 

 

 

イセコレクション展から学ぶ 4日目

さっそく、色彩豊かな明・清代の作品をどんどん見ていこう。

 

これまでどちらかというと深遠な(あまり興味のない方にとっては単に地味かな)趣のある宋代のやきものとは打って変わって鮮やかで、ストレートに美しさをほこっている作品たちだ。

 

黄釉青花瑞果文盤 明時代 弘治在銘(1488-1505)景徳鎮窯

いったん青花を焼き上げた後、白地部分に黄釉を塗り詰めて低火度で再度焼成する技法

目を奪われる高貴な黄色

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  重要美術品 法花蓮池水禽文梅瓶 明時代 15~16世紀 景徳鎮窯

 ◎法花(ほうか):貼付けや堆線で立体的に表した文様部分に各色の鉛釉をかけわけた技法

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どっしりとした 館蔵品の壺も見落とせない。

重要文化財 法花花鳥文壺 明時代 15世紀

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 紅地金襴手宝相華唐草文高足杯 明時代 16世紀 景徳鎮窯

緑地金襴手花鳥文碗 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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高足杯:白磁の器、外側前面に赤色の上絵の具を塗り、二次焼成した後、さらに金彩で文様を描いて焼付けしている

碗:白磁に緑釉を施し、金彩で装飾をしている。金彩は金箔を切って焼き付けたようにみえる。

 

金襴手(きんらんで):陶磁器の表面に金箔や截金(きりがね)、金泥を焼き付けて文様を表す技法

 

黄地青花紅彩牡丹唐草文瓢形瓶 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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  青花焼成後、白地部分に黄釉を塗り詰め、二次焼成し、さらに赤色の上絵の具で文様を描いて三度目の焼付けを行っている

黄、赤、藍のコントラストが鮮やかで、可愛らしいひょうたん型の作品だ。

 

この時代にはびっしりと器を色で塗りつぶしているねぇ。独特な色合いを持つこの作品もその一例だ。

柿地緑彩龍鳳文碗 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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次は五彩呼ばれるいっそう華やかな作品をいくつか鑑賞しよう。

高温で焼成した釉表に、上絵具で絵付けをし、再度低温(700~800度)で焼き付ける技法。白の素地に、鮮やかな赤、黄、緑、青などで描かれた。青花に上絵付されるものも作られていた。

 

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五彩龍文尊形瓶 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
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重要美術品宝相華唐草文有蓋壺     龍文筆盒      百鹿文壺

有蓋壺 明時代 天啓参年唐氏製造銘(1623) 景徳鎮窯
筆盒 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
壺 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
筆箱も五彩で作られているね。

 

極めつけの名品はこちら

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重要文化財 五彩金襴手花鳥文瓢形瓶 明時代 16世紀 景徳鎮窯


見事だねぇ。さて、清時代に入る前に一休み