心待ちにしていた東洋陶磁美術館の唐代胡人俑展が始まった。
何というものだろう。この造形は
私の乏しい経験の中では、見たことがない。
単にやきものの人形といっては足りない。彫刻作品にも似ているが、彫刻ではないし、とにかく今までの私のポケットには収まりどころがない。
やきものや人形としてではなく、人間として見てしまうのだ。
それら(彼ら)は活力にあふれていて、魅力的で、怪しげでもあり、恐ろしげでもある。
何とも心がざわついて、矯めつ眇めつ、何度でも眺めてしまう。
「すごいものを見せてもらっている。」そう感じた。
撮影が許可されているので、多くの方が集中して写真を撮っておられる。
素描をしている方もいた。そう、絵が描けたら、本当に描きたくなる題材だ。
それにしても、このような活気に満ちた俑たちをお墓に連れて行ったということは、当時の人々が死後にも、現世と同じような暮らしが続くことを真剣に願っていたということだろうか。
死後は静かに眠るというイメージではなさそうだ。
「俑」についてもっと知りたくなる。
特集展示室には 特集展「中国陶俑の魅力」として、館蔵品の俑が展示されている。
こちらは愛らしい作品がいくつもあるのだが、胡人俑がもたらす強烈な印象に比べると、ずいぶんおとなしく見える。
この騎馬女俑もとても端正で優美で魅力的だと思うのだが、あの胡人俑たちが醸し出す魅力(魔力か)には分が悪い。
わくわくすることはほかにもある。
展示ケースのディスクリプションを読むのをいつも楽しみにしているのだが、このたびはお茶目な一言が添えられていて、いっそう楽しい。
そして、図録がこの展覧会の内容の厚みを倍にしてくれそうだ。
素晴らしい写真と丁寧な作品解説のほかに、専門家の手による論文が載せられている。
本当に幸せ。
今日のところは第一印象。
私はのみこみが悪いので時間をかけて作品を見ないと、作品との距離が縮まらない。
何度も足を運ぶことにしよう。
うれしいことに主任学芸員の方の連続講座も開かれる。
この冬は胡人俑の世界に浸って、心ざわつかせて過ごせそうだ。