京都国立博物館 特別展「京(みやこ)に生きる文化~茶の湯」

私は作品鑑賞にひどく時間がかかる。大きな展覧会で行列になって歩くと後ろの人に迷惑だ。しかも集中力がすぐ切れるから、丁寧に見て回ると、途中で気力が尽きる。

京都国立博物館で開かれている特別展「京(みやこ)に生きる文化~茶の湯」では作品リストを見ただけでも目が回りそう。名立たる作品が目白押し。全部は到底見られない。どうしようかな。

 

 

そこで、作品から少し離れた場所に立ち、行列に隙間ができるのを待ち、主に興味あるやきものに絞って鑑賞。多くの名品を横目でスキップしたが、それでも最高の作品をいくつも拝見できた。
見始めると、しゃがむ、背伸びをする、のぞき込む、ガラスに鼻を付けそうになる。和服姿も多い上品な会場にあって、およそ似合わない怪しい客になる。知っている人には見られたくない。

 

出来ることなら、一点、一点心ゆくまで見たいが、そんな贅沢は言えない。作品名だけでも書き留めておこう。

 

唐時代邢州窯系の浅めの白磁碗。とても清潔な乳白色。帰ってから図録で確認すると、畳付きも真っ白だ。9世紀には、もうこんなにきれいな白磁が生産されていたんだ。あの定窯にもつながっているのだろうか。

 

禾目があらわれた建盞(南宋時代 12-13世紀)にも目が向く。やっぱり、端正な天目茶碗は佳いなぁ。気持ちが器に集中して心が落ち着く。
後期展示には、また別の建盞が展示されるらしい。きっと美術誌「天目~てのひらの宇宙」で紹介されていた禾目天目だねぇ。これも見たい。また来なくてはならないか?

 

国宝の玳玻天目(南宋時代 12-13世紀 相国寺)は技巧の力がデザインを際立たせているみたい。存在感があって、見逃すんじゃないと言われたように感じた。

 

北宋第8代皇帝徽宗の作と伝えられる国宝「桃鳩図」にお会いできるとは!
芸術を愛したことで有名な皇帝ゆかりの名画が日本に今日まで伝えられていることに感銘を受ける。
この絵は、小さいころ読んでいた子供向けの文学全集の表紙のひとつだったから何だか懐かしい(世界の名画がカバーに印刷されていた)。

 

名品が続く。綺羅星のごとく、だね。
龍光院の油滴天目(南宋時代 12-13世紀 重要文化財) 小ぶりの器面を、びっしりと斑文が覆っている。本当にどうやって作られたのだろう、と思わずにはいられない。

 

「馬蝗絆(ばこうはん)」という銘を持つ有名な青磁茶碗(南宋時代 13世紀 重要文化財 東京国立博物館)澄んだ清らかな青磁の色に見とれてしまう。優しい姿で、鎹も可愛い。

 

MIHO MUSEUMの耀変天目(南宋時代 12-13世紀 重要文化財)は内外に虹色の斑文が広がっていて、星空のように美しい。胴部を見たくて、しゃがみながら、茶碗の周囲を回る、回る。膝が悪いと見られないね。

 

大きな黒い花入れに目がとまる。古銅下蕪耳付花入 銘「青海波」(明時代)まろやかな艶やかな輝きを放っている。古銅とは品格があるものだな。

 

さて、最後に青磁鳳凰耳花入の揃い踏み(と書くと、東洋陶磁美術館の作品も登場してほしいが)について記録しておこう。
2点の青磁鳳凰耳花入れ 銘「万聲」(南宋時代 13世紀 国宝 和泉市久保惣記念美術館)と銘「千聲」(南宋時代 13世紀 重要文化財 陽明文庫)が並べて展示されている。「万聲」はかなり大きな作品だ。「千聲」は貫入がはいっているところが特徴。このケースだけでも見応え充分。「万聲」についてはかねてより見に行きたいと思っていたので、幸運だ。

 

和泉市久保惣記念美術館デジタルミュージアムからの引用

青磁 鳳凰耳花生 銘「万声」和泉市久保惣記念美術館

 

こんなつまみ食いみたいな見方でも、すっかりくたびれてしまった。我ながら、ちょっと軟弱すぎる。
素晴らしいのは間違いない。後期展示には行こうかなぁ、どうしようかなぁ……