「天目―中国黒釉の美」展の会期が残り少なくなった。個人蔵の作品とはもう見納め。名残惜しい。
何年経っても、頭の中で再現できるように会場の写真をほぼ展示の順に並べてみる。
おさらい編だね。
作品だけでなく、会場の雰囲気もずっと覚えていたいから。
6月 待ちかねた開館だった。
お出迎えの作品は唐時代の壺。何度も見たことがあるのだけれど、ここでは違って見える。釉を振り分けて、青と白に発色したところがこんなにきれいだったかな。
この水注も釉を振り分ける技法が見どころ
「魯山花瓷」「唐鈞」という言葉を覚えておこう。
会場の一隅がまばゆい。あれが油滴天目だね。
その隣にもキラキラしている作品が見える。何だろうな
逸る気持ちを抑えて、まずは黒釉堆線文の磁州窯の作品を楽しむ
向こうには大きな双耳壺が見える。
都会的でおしゃれなシリーズだね。
覚えておく言葉:「イッチン技法」
磁州窯の黒釉白地掻落 牡丹文梅瓶 上向きの牡丹の花の面しか見たことがない。
回転台の上で回って違った表情を見せてくれている
へぇー作品全体はこんなデザイン!
定窯の洗とか耀州窯の瓶とか、有名で大好きな作品もこんなふうに、側面ぐるっと、それに見込も、畳付きも、ちょっとしたキズも全部鑑賞できたらよいな。
次のケースは愛すべき小品が並んでいる。
持ち主だったひとびとの優雅な暮らしを想像する。
ここでの言葉は「飛白文→飛び鉋」「河南天目」
格調高い木葉天目 このたびの展示では外側の艶やかな黒がよく見える。
覆輪をつけて、金彩の梅の花が見えていたら、ずいぶん華やかさが加わっただろうね。
木葉天目は吉州窯
そして会場に入って来たときから、気になっていたこのケース
三つの禾目天目だ。
姿かたちの端正な美しさ、に、加えて青色や虹色に輝いている!
一瞬にして心を奪われる、とはこういうことか
どんなひとびとの手に渡ってきたのだろう。
実物は写真よりずっと素晴らしい。
国宝油滴天目の美も到底コンパクトカメラでは写しきれない。私の乏しい言葉では言い表せない。
何度見ても引きずり込まれるような世界だ。とにかく見るしかない。
さて、最後に「白覆輪天目」のコーナーに目を転じよう。
最初にみたときは、違和感のある不思議な白いふちと感じた。
銀や錫などの金属製の覆輪に似せて、釉を削り、白化粧をかけ、さらに透明釉を掛け、と、とても手をかけて作られているそうだ。
褐斑を筆で書いたり散らしたりしている作品もとても面白い。
憧れの建盞の面影に似せて、北方の窯で色々な作品が試みられたのかな。
「北方油滴」という言葉を覚えておこう。
宋の国が南に逃れてしまったとき、金の支配下にあった北方の窯はどうなっていたのだろう。そんな陶磁器の歴史についてこれからも知ることが出来たら人生の楽しみだ。
中国で点茶法が流行らなくなったのに、日本では茶道の文化がずっと現在まで続いている。貴重な天目も伝世された。日本という国の不思議さを感じる。文化財が守られていきますように。
さあ、これでようやく一巡り。たった一部屋の会場なのに、内容が詰まっているねぇ。
美しいものが最高に美しく見える会場だ。
心からの感謝の気持ちをもってお別れすることにしよう。