「顔氏家訓」を読んで

魏晋南北朝」(川勝義雄著 講談社学術文庫 何度読んでも頭に入らないのだけれど何度読んでも面白い)を読むうちに何度か「顔之推 がんしすい」という人の言葉が引用されていた。どんな人だったのだろう、とても気になった。

 

6世紀中国江陵に生まれた人。
南朝梁の末期に仕え、からくも侯景の乱をしのいだが、西魏の急襲によって梁は滅亡し、顔之推は捕虜になり北方異民族の国へ連れ去られた。
捕虜になってから数年ののち、北斉へ脱出し北斉王朝に仕えた。
そこで起こった文林館の知識人たちの悲劇からは免れたものの、北斉そのものが北周に滅ぼされてしまう。
顔之推はまたも関中に移送され、北周、隋と仕えて生涯を終える……

これで合っているのかな、本から拾い読みしていると何だかわからなくなる。何と波乱の人生であることか

 

何度も敵方に捉えられ捕虜になった先々で自らの知の力で重用されたこと、黄河に舟を浮かべて決死の逃亡をはかり成功させたこと、戦乱と政争の死地から何度も生き延びたことは想像すらできないすごいことだ。


それにもまして私が何よりすごいと思うのは、捕虜になろうと異民族の王朝に仕えようと、恥を忍んで、妻子を連れ、家族とともに生き延びようとしたことだ。

人間としての貴さ、勇気、強さに心惹かれる。

 

それでまたいつもお世話になっている講談社学術文庫から「顔氏家訓」(顔之推 林田愼之助訳)を購入し、読んでみた。


内容は自分の子供、子孫に伝える「家訓」であるのだけれど、うん、うんと現代でもなお頷けることが多くて驚きである。


顔之推その人の人柄がうかんでくるようで感動と憧れを覚えた。
1400年も昔の人だけれど、できることならその人が放つ香気に触れてみたい。


書物の中で仰ぎ見る人が増えました。覚えの悪い頭に学びたいことがまた増えたなぁ。