越窯の水注

陶磁器を日をおいて鑑賞すると、見るたび見るたびに違った美しさを感じることがよくある。

「高麗青磁ーヒスイのきらめき」特別展をまた訪れて、ヒスイの釉色によりいっそううっとりとなる。

 

だが、今日は中国陶磁の部屋に展示されている水注にもぐっときた。

 

高麗青磁の名品をたっぷり見た後で、おなじみの中国陶磁をのんびりと楽しむ。

特別展の開催中だから、平常展の展示は縮小されている。

その中で、水注3点と多嘴壺が並んでいるケースが何となく気になっていた。

 

「越窯」の水注が展示されている。

越窯青磁は古くから「秘色」と称えられ、このたびの高麗青磁展でも、越窯青磁の技術が伝わって高麗青磁発展の基礎となったと紹介されている。

 

そのような憧れの的であった「秘色」とはどんな青磁なのだろう。

昨年秋に開催されたイセコレクション展で越窯の水注を鑑賞したのだけれど、これが「秘色」なのかなぁ。何だかよくわからなかった。

 

(イセコレクション展から)

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青磁劃花雲鶴文水注 北宋時代 10世紀 越窯

  

 さて、その気になるケースに戻ろう。

右端に越窯の青磁水注があり、隣に「越窯の『秘色』青磁を意識した…」龍泉窯の八角水注、「かつて多嘴壺は越窯の製品とされてきましたが…」とある同じく龍泉窯の多嘴壺、左に景徳鎮窯のすらりとした水注が並ぶ。右3つは越窯つながり?

 

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 青磁劃花鴛鴦文水注 北宋時代 10-11世紀 越窯

 

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(左)青磁劃花葉文八角水注 北宋時代 11世紀 龍泉窯(中)青磁陰刻草花文多嘴壺 北宋時代 11世紀 龍泉窯(右)青白磁瓜形水注 北宋時代 11世紀 景徳鎮窯

 

高麗青磁展の会場で、動植物の文様、柔らかい曲線、象嵌、陽刻などの精緻な装飾に満ちた麗しの水注を見た後で、こちらの作品を見ると、ちょっと愛想がない印象かもしれない。

 

水注の器形は、いずれも金銀器、金属器を写したかたちとされていて、すっきりとしてこれはこれですてきだ。

特に越窯の水注を見て、あれ、これってこんなにキュートで見事な作品と驚く。宋磁展にも展示されていたのに気が付いていなかった。

 

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越窯の水注には細かい陰刻文様が施されている。

 

つやつやとした肌、端正なかたち、オシドリの模様のほかにも細部まで丁寧に模様が彫りこまれて、きれいな作品だ。

 

高麗青磁の多様なデザインや装飾に魅せられた後、今までどちらかというとあまり好きと思っていなかった金属器を写したような器形のものに目が行く自分自身も意外だった。

「秘色」についてはこれからの出会いを楽しみにしよう。

 

 さて、東洋陶磁美術館と特別連携の大和文華館と寧楽美術館の展覧会のお知らせもあったので記録しておこう。

ぜひ、行ってみたい。

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