出光美術館の展覧会図録「宋磁ー神秘のやきもの」を、東洋陶磁美術館の館蔵品やイセコレクション展の作品と重ね合わせながら楽しんでいる。
宋磁とは何とも素晴らしいやきものだ。
見るたび、見るたびに表情を変える釉の不思議さ
すっきりとした形
釉の下で、控えめだけれど技が光る装飾の見事さ
どうしてこのようなものが作り出されて、誰がどんなふうに使ったのか、どのように伝わってきたのか、ほんとに神秘のやきものだ。
1000年前にしてすでにその美しさは完璧……
しかし、恥ずかしながら、私は20年ぐらい前から何度となく東洋陶磁美術館で宋磁に触れているというのに、心に沁みるように美しいと感じるようになったのはつい最近になってからのことだ。
なんという感覚の鈍さだろう。いままで無数の美しさの前を素通りしてきたのに違いない。見る目がないんだから仕方がないが。
これからは、作品との出会いを大事にしようと思う。
まぁ、でも、華やかな絵付けの磁器には目を奪われるし、産地の味わいがある民芸的な陶器には手に取ってみたくなる親しさがあるけれども、宋磁のようなやきものよさはちょっとわかりにくい気もするなぁ。
洗練されすぎていて、品格があって近寄りがたい。
色あいが神妙というか微妙で 、現代的にはちょっと地味かねぇ。
出光美術館の図録はそうした距離感を少し縮めてくれるように思える。
窯(産地)ごとに章立てしてくれているので、特徴を理解しやすい。
その中で、自分の好きな作品が見つかると、興味がましてくる。
図録の作品ーやっぱり実際に見てみたいものばかり。
耀州窯の碗が2点掲載されている。これも素敵だなぁ。
そういえば、「中国古陶磁清玩」(東洋陶磁美術館発行)という図録を買ってときどき通勤時に仕事を忘れて楽しんでいるが、これにも耀州窯の碗がいくつか載っていて、いつかは実物を鑑賞したいと願っている。
いや、これは展示されたときに、実際に見たかもしれない。当時の私にはその美しさがわからなかっただけではないか。
今度は平常展でゆっくり宋磁にお会いしよう。
そのときに、いつもはお目にかかれない、どちらかというと小ぶりの作品も鑑賞できたらありがたいな。期待して待ちましょう。