次の展覧会が近づいてきた!

風邪が治ったと思ったら、また風邪を引いた。出不精、ものぐさが悪化する。

悪しき習慣から脱却しようと試みると、決まって1歩前進3歩後退。やれやれ

 

その間にもう師走が近づいてしまった。

東洋陶磁美術館の次の展覧会ももうすぐだ。早く風邪をすっかり治さなければ。

 

次の「唐代胡人俑」展は何だか異色というか、愉快そうだ。

 

唐代の俑といえば、館蔵品の可憐な女性像とか

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加彩 婦女俑 唐時代 8世紀前半

気品ある宮廷の女性とか
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加彩 宮女俑 唐時代 7世紀

 

あるいは

イセコレクションの中の男装の麗人 のように

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加彩 女俑 唐時代 8世紀

雅なイメージを持っていたのだが、

 

今度やって来る胡人俑は、予告動画や広報チラシを眺める限りではだいぶん違う趣だ。

 

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表情がとても豊かで、一瞬を捉えたポーズが決まっている。

劇画調というか、漫画チックでもある。

そして、古代のシルクロードの空気がいっぱい漂っている。


こんな人形たちがお墓に一緒に葬られたら、あの世も賑やかそうな感じがする。

どのような思いで、俑がつくられ、埋葬されたのだろう。

あるいはその時代のその地域の流行なのだろうか。

 

どんな技法で制作されたのだろう。

型にはめたのか、一体一体オリジナル?

美しい彩色がいまだ残っているが、出来上がった当時はどんな鮮やかな色をまとっていたのだろう。

 

同時に「中国唐俑の魅力」特集展もある。いつもはしまってある館蔵品が見られるのも楽しみだ。

そういえば、今度は鈞窯の月白釉碗に会えるかな。

あれやこれやと、妄想がふくらんでいくなあ。

さっさと風邪を治して年末の雑事を終わらせなければ…

 

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イセコレクション展から学ぶ 4日目つづき

このたびの展覧会の作品は、いつもならイ・ビョンチャン博士のコレクションと日本陶磁の展示室になっている2部屋に展開されている。

 

日本陶磁の展示室は座敷で鑑賞することをイメージして展示ケースが低い。おかげで、器の見込(碗や皿などの内側部分)を見る事ができる。

 

通常の展示だとなかなか見込が見えなくてガラスに張り付いて背伸びしてのぞき込むことになる。ガラス汚してごめんなさい。

 

外側の胴まわりと見込を両方よく見せる展示ケースは限られているので仕方がない。

 

見込が見えるいっぽうで、低い展示ケースの中にある小品の器側面を見るのはなかなか苦労する。

 

清時代の美しい碗側面を見ようとして私も含め何人かのひとが、身体を横に曲げる、あるいはしゃがみ込むなどして鑑賞していた。傍から見たらおかしな光景である。

 

さて、大詰め清時代である。技術の発達の上に花開いた作品を見ていこう。

 

素三彩花蝶文鉢 清時代 康煕在銘(1662-1722) 景徳鎮窯

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素三彩とは素焼きした磁胎素地に、緑、黄、紫などの鉛釉系の色釉をかけわけ、低火度で再焼成したもの。

花の模様の下に龍の文様が刻まれている。花蝶模様と龍の文様に関係があるのか、ないのか、美しくも不思議な印象を与える碗である。

 

 

釉裏紅団鳳文碗 清時代 康煕在銘 (1662-1722) 景徳鎮窯

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 ◎釉裏紅(ゆうりこう): 器表に酸化銅を含んだ顔料で絵付けをする技法。銅は均一の発色を得ることが難しい。 

 清時代には安定した美しい発色と緻密な文様表現が可能になった。

 

館蔵品ではこんな大きな盤もある。

釉裏紅牡丹文盤 明時代 洪武(1368-98) 景徳鎮窯

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 次はこの展覧会のクイーン

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粉彩花樹文瓶 清時代 雍正在銘(1723-35) 景徳鎮窯

 ◎粉彩:磁器の釉表に不透明の白色顔料で文様の下地を描き、その上にいろいろな顔料で絵付けをして、再度焼成したもの。ヨーロッパの無線七宝の技術を応用して考案された。

 

 構図も色彩表現も、陶磁器に描かれた文様というより絵画のようで、どこか洋風でもある優雅な作品。

 

さて、次は豆彩

淡い青緑色(豆色)の上絵の具が美しいことから豆彩の名がついたという。

豆彩瑞獣波濤文盤 清時代 雍正在銘(1723-35) 景徳鎮窯

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 次の盤は明時代の黄釉青花盤によく似ているけれども、酸化アンチモンが呈色剤に使われていてもっとレモンイエローに近い。

黄地青花桃樹文盤 清時代 乾隆在銘(1736-95) 景徳鎮窯

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次は夾彩 

 粉彩と同様の上絵の具を用いて、白磁の器全体を余白を残さずに地色や文様で塗り詰めたもの。

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夾彩八吉祥文觚形瓶 一対 清時代 乾隆在銘(1736-95) 景徳鎮窯

 

まだ続く。

これはいったいどうやってつくったのだろう。現在ではパール光沢のある食器はよく目にするけれど
真珠釉暗花壽字龍文碗 一対 清時代 乾隆在銘(1736-95) 景徳鎮窯

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自分としては白磁を見ると心が落ち着く感じ。

 

最後にこの作品を見て、この展覧会からの学習を終了としよう。

茶葉末双耳壺 清時代 嘉慶在銘(1796-1820) 景徳鎮窯

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鉄を呈色剤にした失透性の釉を高火度焼成することで、茶葉の粉末のような発色を見せる。

これは固体ではなく中に液体が流れているのではないかと思われるような器の肌

陶磁というのは奥が深い。

 

すごいコレクションだねぇ。中国陶磁の歴史を名品を通して、学ばせてもらいました。

素晴らしいものを惜しみなく見せていただいたことに感謝。

今日はここまで。

 

 

 

 

 

 

イセコレクション展から学ぶ 4日目

さっそく、色彩豊かな明・清代の作品をどんどん見ていこう。

 

これまでどちらかというと深遠な(あまり興味のない方にとっては単に地味かな)趣のある宋代のやきものとは打って変わって鮮やかで、ストレートに美しさをほこっている作品たちだ。

 

黄釉青花瑞果文盤 明時代 弘治在銘(1488-1505)景徳鎮窯

いったん青花を焼き上げた後、白地部分に黄釉を塗り詰めて低火度で再度焼成する技法

目を奪われる高貴な黄色

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  重要美術品 法花蓮池水禽文梅瓶 明時代 15~16世紀 景徳鎮窯

 ◎法花(ほうか):貼付けや堆線で立体的に表した文様部分に各色の鉛釉をかけわけた技法

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どっしりとした 館蔵品の壺も見落とせない。

重要文化財 法花花鳥文壺 明時代 15世紀

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 紅地金襴手宝相華唐草文高足杯 明時代 16世紀 景徳鎮窯

緑地金襴手花鳥文碗 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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高足杯:白磁の器、外側前面に赤色の上絵の具を塗り、二次焼成した後、さらに金彩で文様を描いて焼付けしている

碗:白磁に緑釉を施し、金彩で装飾をしている。金彩は金箔を切って焼き付けたようにみえる。

 

金襴手(きんらんで):陶磁器の表面に金箔や截金(きりがね)、金泥を焼き付けて文様を表す技法

 

黄地青花紅彩牡丹唐草文瓢形瓶 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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  青花焼成後、白地部分に黄釉を塗り詰め、二次焼成し、さらに赤色の上絵の具で文様を描いて三度目の焼付けを行っている

黄、赤、藍のコントラストが鮮やかで、可愛らしいひょうたん型の作品だ。

 

この時代にはびっしりと器を色で塗りつぶしているねぇ。独特な色合いを持つこの作品もその一例だ。

柿地緑彩龍鳳文碗 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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次は五彩呼ばれるいっそう華やかな作品をいくつか鑑賞しよう。

高温で焼成した釉表に、上絵具で絵付けをし、再度低温(700~800度)で焼き付ける技法。白の素地に、鮮やかな赤、黄、緑、青などで描かれた。青花に上絵付されるものも作られていた。

 

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五彩龍文尊形瓶 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
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重要美術品宝相華唐草文有蓋壺     龍文筆盒      百鹿文壺

有蓋壺 明時代 天啓参年唐氏製造銘(1623) 景徳鎮窯
筆盒 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
壺 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
筆箱も五彩で作られているね。

 

極めつけの名品はこちら

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重要文化財 五彩金襴手花鳥文瓢形瓶 明時代 16世紀 景徳鎮窯


見事だねぇ。さて、清時代に入る前に一休み

 

 

 

 

 

 

 



 

 

イセコレクション展から学ぶ 3日目

イセコレクション展 今日は元~明時代の作品から鑑賞していこう。

 

このたびの展覧会では、加賀前田家に伝来した、しっとりと落ち着いた天目 (黒釉の茶碗)が出展されている。

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灰被天目茶碗 茶洋窯 元ー明時代 14~15世紀   右写真は天目台と

そういえば、2年前に開催された「黄金時代の茶道具展」では、ただひたすら感心するばかりで、その後あまり覚えていない。

もうちょっとわかっていたら、もっと楽しめたかもしれない。もったいないことをした。

茶碗のことも機会があったら覚えていこう。

 

  さて、次は「澱青釉(でんせいゆう)」と呼ばれる鈞窯特有の失透性の青色釉に、酸化銅を加えて、還元焼成し、紫色を発色させた作品

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紫紅釉稜花盆 鈞窯 明時代 15世紀

 高台内に漢数字の「六」の刻印が見られ、器のサイズを示している。

高台内に刻印番号がある鈞窯の製品は「官鈞(かんきん)」と呼ばれる宮廷用の器

 

高台(こうだい):器の底につくられる、支えとなる台の部分。

やきものの作り方とか、素地の色とかがわかるから底はとっても大事なんだねぇ。

 

次は青花(せいか)

白磁の素地の上にコバルト顔料を用いて、筆で文様を描き、透明釉をかけて焼成する技法。日本では染付(そめつけ)という。

 

ぐっと現代のやきものに通じる作品があらわれてくる(逆かな。現代のやきものが古代のやきものを追っている?)。

 

麒麟文瓶 元時代 13~14世紀     龍文高足杯 元時代 14世紀

いずれも景徳鎮窯

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 すがすがしい白と青、のびやかな麒麟と龍、すてきな作品だ。

 

 そういえば、館蔵品に大物がある。高い技術に圧倒される。

 重要文化財 蓮池魚藻文壺 元時代 14世紀 景徳鎮窯

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時代が下って明時代の作品

 青花は中近東にも輸出され、輸出先の人々の好みに合わせた作品も生産された。

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宝相華文稜花盤      花唐草文碗      龍文鉢

左  盤 明時代 永楽(1403-24)
中央 碗 明時代 成化在銘(1465-87)

右  盤 明時代 正徳在銘(1506-21) いずれも景徳鎮窯

 

今日の最後は 館蔵品のこの作品

宮廷で用いられた梅瓶(めいびん)

ふたの部分にのみ、青花で文様が描かれ、白の美しさが際立っている。

青花 内府銘 梅瓶 明時代 永楽(1403-24) 景徳鎮窯

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明・清代の華やかな色彩と文様の世界は次回にとっておこう。今日はここまで

 

 

 

 

イセコレクション展から学ぶ 2日目

今日はイセコレクション展の中から、名品花盛りの宋時代から元時代。

作品と窯の名前、特徴とされる技法などを結び付けて覚えよう。

この夏の館蔵品鑑賞のおさらいもできる。

 

最初は唐時代の終わりごろ「秘色」青磁とたたえられた最高級青磁を産み出した越窯の水注 北宋時代 10世紀

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青磁劃花雲鶴文水注

 

続いて、現在でもよく知られている景徳鎮窯の青白磁 北宋時代11~12世紀

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瓜型水注    杯 托   

白磁白磁の胎土に鉄分をわずかに含んだ透明釉をかけたもので、青みを帯びた色調から「影青(インチン)」とも呼ばれる。

 

そして定窯 金時代 12~13世紀の作品3点

 河北省の定窯では、晩唐時代から白磁がつくられ、宋から金時代にさかんに生産が行われた。

酸化焼成によるやや黄味を帯びた柔らかな象牙色の釉色は「牙白色」とも呼ばれる。

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瓶     印花柘榴唐草文碗     銹花蓮花文盤

おなじみの館蔵品ではこちら。 北宋時代11世紀 刻花牡丹文瓶 

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印花:素地に文様の型をおす装飾
◎銹花(しゅうか):鉄泥による絵付け

 ◎刻花片切り彫りともいう。工具の刃をねかせて文様の輪郭を描く方法

 

 次は磁州窯

のびのびとした模様がとてもモダンな瓶 白地鉄絵牡丹文瓶

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磁州窯を代表する装飾技法といわれる白地黒掻き落しの作品

黒釉刻花牡丹唐草文瓶 

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黒釉刻花:白化粧地の上に鉄絵具をかけ、模様の周囲の絵具をへらで掻き落とし、その上から透明釉をかけて焼成する技法

手の込んだ技法でつくられた館蔵品の磁州窯作品を2点

 

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黒釉刻花牡丹文梅瓶     緑釉黒花牡丹文瓶

 

そしてさらに青磁の名窯 耀州窯・南宋官窯・龍泉窯と続いて見ていこう。

耀州窯

片切り彫りで深く刻まれた模様に、オリーブグリーンの釉が厚くたまって美しい。

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青磁刻花牡丹文鉢     青磁刻花唐草文鼎形香炉

鉢は北宋時代11~12世紀、香炉は北宋・金時代12世紀

 

館蔵品では重要文化財のこちらの作品 青磁刻花牡丹唐草文瓶 北宋時代11~12世紀f:id:ivoryw:20171022185757j:plain

 

南宋官窯

南宋の都臨安に修内司(しゅうないし)官窯と郊壇下(こうだんか)官窯の2つの官窯が設置された。

その特徴は黒く緻密な胎土を薄く成形し、釉を何層にも厚くかけていること。

青磁 輪花盤 12~13世紀 失透性の粉青色とも呼ばれる美しい釉色が発色している。

全体に網目状の貫入がはいっている。

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貫入:素地と釉の膨張率の差などによって、陶磁器の釉にこまかいひび割れがはいっている状態

館蔵品ではこちら 青磁 八角瓶 南宋時代 12世紀

 

 本当にたっぷりと釉がかけられて、とても品のある作品だ。

 

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龍泉窯

龍泉窯の青磁鎌倉時代以降、貿易によって日本に大量に輸入された。そのなかで南宋時代から元時代の粉青色の美しい青磁は、「砧(きぬた)青磁」と呼ばれ、珍重された。

日本ではその写しも各地でつくられたため、龍泉窯青磁は日本人には最もなじみの深い中国陶磁の一つとなっている。

なるほど、確かに青磁といえばこんな青緑色を思い起こす。

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青磁貼花牡丹唐草文瓶     青磁貼花魚文盤

瓶は南宋・元時代 13・14世紀  盤は元時代 13・14世紀

今日の最後は重要文化財と国宝を見て終了。

 

重要文化財 飛青磁瓶 元時代13~14世紀

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とろんとした釉色がたまらない。

青磁(とびせいじ)鉄分で斑点のような装飾が施された青磁に対する日本独自の呼称

 

館蔵品ではこの2つの名品。

重要文化財 青磁鳳凰耳花生 南宋時代 12世紀 

国宝 飛青磁花生 元時代 14世紀(現在国宝展に貸出中)

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青磁鳳凰耳花生      飛青磁花生

なんで、宋・元時代にこんな素晴らしいものがいっぱいできたのだろう。

目の幸せいっぱい。明・清時代はこの次だねぇ

 

 

 

イセコレクション展から学ぶ

中国の長い長いやきものの歴史を、現在東洋陶磁美術館で開催されている「イセコレクション」展の展示作品と館蔵品、そして、図録を読みながらサラッと学習しようと無謀なことを試みる。

 

まず、2つの壺

 灰釉 刻花鎬文(しのぎもん)遊環壺 と  灰釉 印文壺 越窯

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これを見たとき、紀元前3世紀~5世紀(戦国時代)と1~2世紀(後漢時代)というものでありながら、すでに洗練され、完成された美しさを感じて、展示のはじめから驚いた。

 

以下、主に次の3冊の書籍から、教えていただこう。

「イセコレクション~世界を魅了した中国陶磁」

大阪市立東洋陶磁美術館コレクション~東洋陶磁の美」

「中国・韓国 日本のやきもの 大阪市立東洋陶磁美術館館蔵品名品選」

 

★商周時代から春秋戦国時代にかけて青磁の前身といえる「原始青磁」が浙江省北部を中心に発展した-----「商(殷)」って、紀元前17世紀ごろの王朝がでてきた。後漢ぐらいで驚いてはいけないのだ。

 

後漢時代になると、ついに成熟した青磁が越国の地で誕生した。

 

ここで基本の言葉をおさえよう。

 ◎灰釉(かいゆう):木炭や石灰などを媒熔剤(釉をとけやすくする成分)とし、約1,250度以上でとける高火度釉

 ◎青磁:灰釉に酸化鉄を呈色剤(釉に特有の色を出す成分)として加え、還元焔焼成すると青緑色が発色される

 

つまり、浙江省北部地域で、1,000年以上かけて、高い温度で焼く灰釉の技術が磨かれてゆき、美しい青磁が産み出されたということかな。

もうすでにため息がでるけど、ここからさらに長い青磁発展の旅があるんだねぇ。

 

さて、次は副葬品の陶器

地中にあって銀化(化学変化)した 緑釉 獣環壺 後漢時代2~3世紀

とても銀化の部分が広がっているが、それはそれできれいだ。

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★青銅器の「鐘(しょう)」を模ったもの。副葬用の明器(死者とともに墓におさめた器物)

 

★副葬品としての低火度鉛釉の陶器は後漢時代に流行した

 

鉛釉:酸化鉛を媒溶剤とした、約800度でとける低火度釉

 ◎緑釉:鉛釉に酸化銅を呈色剤として加え、酸化焔焼成し、緑色が発色する。

 

 

続いて同じく副葬品として人物を模った2作品

加彩 官人 俑 北魏6世紀       加彩 女俑 唐時代8世紀

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 ◎俑(よう):副葬用の陶器人形

やさしい仏像のような官人像と、手に何を持っていたのかなと惹きつけられる女性像だ。

 

昔の人は、死後も生前と同じような生活をしたいと考えて、いろいろなものをお墓に埋葬したのだ。

 

唐時代の俑といえば、やっぱり館蔵品のこの女性をはずせない。

気品ある立ち姿でいつも来館者を迎えてくれるシンボル的な存在だ。

 

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加彩 婦女俑

 

唐時代では三彩がとても有名だ。 

三彩長頸瓶    三彩貼花宝相華文有蓋三足壺   三彩蓮花文三足盤 

すべて唐時代 7~8世紀    

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エキゾチックで華やかな作品。盤の青色は非常に鮮やかであった。

 

 ★唐三彩は、7世紀から8世紀にかけて、河南省の鞏義窯を中心とした華北各地でつくられた。

 

三彩:緑釉、褐釉などを素地にかけわけて、800度前後の低火度で酸化焔焼成したもの。

褐釉:鉛釉に酸化鉄を呈色剤として加え、酸化焔焼成すると褐色に発色する。

藍釉:鉛釉に酸化コバルトを呈色剤に加え、酸化焔焼成すると藍色に発色する。

 

館蔵品のこちらも 加えよう。

三彩貼花宝相華文水注 唐時代7~8世紀   三彩獅子 唐時代8世紀

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貼花(ちょうか):素地に別づくりした装飾を貼る技法

 

国際色豊かな唐の繁栄を偲ばせる作品だ。

 

これで1,000年くらいかな。つづきはまた今度

 

イセコレクション展 黄褐色の瓶について

イセコレクション~世界を魅了した中国陶磁 国際巡回企画展を再訪

 

今回はカメラを携えて、撮影しながらゆっくり作品を鑑賞した。

展示作品86点を1点ずつ見開きで解説している図録もいただいた。(86点のほかに会場には青銅器や堆朱の箪笥などが展示されている)

 

東洋陶磁美術館の館蔵品とイセコレクションの作品を鑑賞し(何と贅沢な!)、図録を読み、自分の撮った写真で作品に出合った印象を思い出しながら、これから中国陶磁のことを自分で少しずつでも勉強しようと意気込んでいる。

 

が、その前に、前回見て、忘れられずにいた作品について記録しておこう。

青磁 長頸瓶 南宋官窯 12~13世紀


(本当はもっともっと美しい色です。ご覧になりたい方はぜひ美術館に足をおはこびください。)

 

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最初この作品を見たとき、青磁と言いながら黄褐色で、しかも何とも形容のできない肌の感じに目を離すことができなかった。

やきもののうわぐすりというのは、いくらたっぷりかけてあってもそんなに厚みはないはずなのに、どんどんその釉の世界に引き込まれてしまうような不思議さがある。

 

今日、あらためてその作品解説を読み、なるほどと唸った。

まず、作品の色については本来は「粉青色」、並んで展示してある輪花盤のような色を

望んで焼かれたのではないかということ。

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青磁は還元焔焼成(と、とりあえず覚えておこう)で発色するが、この作品ではそれが酸化焔焼成になってしまい、黄褐色になっている。

 

しかし、日本ではこのような淡い黄褐色を稲の籾に例えて早くから「米色(べいしょく)青磁」と呼んで珍重しているのだそうだ。

 

そして、あの不思議に見える釉薬については「ガラスの透明感が強く、大きめの貫入と小さな貫入が立体的に入ったいわゆる『二重貫入』となっている」とある。

そうなのだ。小さな泡が湧き出すといったらよいのか、じっと眺めていると取り込まれてしまいそうだ。

まったくうわぐすりの魔法にかかったようだ。

納得しながらも、またも作品の前を去りがたく、何度か戻って眺めていた。

 

あぁ、楽しかったな。この展覧会が終わる前にもう一度会いたい。

今日はここまで。