イセコレクション展から学ぶ 4日目

さっそく、色彩豊かな明・清代の作品をどんどん見ていこう。

 

これまでどちらかというと深遠な(あまり興味のない方にとっては単に地味かな)趣のある宋代のやきものとは打って変わって鮮やかで、ストレートに美しさをほこっている作品たちだ。

 

黄釉青花瑞果文盤 明時代 弘治在銘(1488-1505)景徳鎮窯

いったん青花を焼き上げた後、白地部分に黄釉を塗り詰めて低火度で再度焼成する技法

目を奪われる高貴な黄色

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  重要美術品 法花蓮池水禽文梅瓶 明時代 15~16世紀 景徳鎮窯

 ◎法花(ほうか):貼付けや堆線で立体的に表した文様部分に各色の鉛釉をかけわけた技法

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どっしりとした 館蔵品の壺も見落とせない。

重要文化財 法花花鳥文壺 明時代 15世紀

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 紅地金襴手宝相華唐草文高足杯 明時代 16世紀 景徳鎮窯

緑地金襴手花鳥文碗 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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高足杯:白磁の器、外側前面に赤色の上絵の具を塗り、二次焼成した後、さらに金彩で文様を描いて焼付けしている

碗:白磁に緑釉を施し、金彩で装飾をしている。金彩は金箔を切って焼き付けたようにみえる。

 

金襴手(きんらんで):陶磁器の表面に金箔や截金(きりがね)、金泥を焼き付けて文様を表す技法

 

黄地青花紅彩牡丹唐草文瓢形瓶 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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  青花焼成後、白地部分に黄釉を塗り詰め、二次焼成し、さらに赤色の上絵の具で文様を描いて三度目の焼付けを行っている

黄、赤、藍のコントラストが鮮やかで、可愛らしいひょうたん型の作品だ。

 

この時代にはびっしりと器を色で塗りつぶしているねぇ。独特な色合いを持つこの作品もその一例だ。

柿地緑彩龍鳳文碗 明時代 嘉靖在銘(1522-66) 景徳鎮窯

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次は五彩呼ばれるいっそう華やかな作品をいくつか鑑賞しよう。

高温で焼成した釉表に、上絵具で絵付けをし、再度低温(700~800度)で焼き付ける技法。白の素地に、鮮やかな赤、黄、緑、青などで描かれた。青花に上絵付されるものも作られていた。

 

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五彩龍文尊形瓶 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
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重要美術品宝相華唐草文有蓋壺     龍文筆盒      百鹿文壺

有蓋壺 明時代 天啓参年唐氏製造銘(1623) 景徳鎮窯
筆盒 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
壺 明時代 万暦在銘(1573-1620) 景徳鎮窯
筆箱も五彩で作られているね。

 

極めつけの名品はこちら

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重要文化財 五彩金襴手花鳥文瓢形瓶 明時代 16世紀 景徳鎮窯


見事だねぇ。さて、清時代に入る前に一休み

 

 

 

 

 

 

 



 

 

イセコレクション展から学ぶ 3日目

イセコレクション展 今日は元~明時代の作品から鑑賞していこう。

 

このたびの展覧会では、加賀前田家に伝来した、しっとりと落ち着いた天目 (黒釉の茶碗)が出展されている。

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灰被天目茶碗 茶洋窯 元ー明時代 14~15世紀   右写真は天目台と

そういえば、2年前に開催された「黄金時代の茶道具展」では、ただひたすら感心するばかりで、その後あまり覚えていない。

もうちょっとわかっていたら、もっと楽しめたかもしれない。もったいないことをした。

茶碗のことも機会があったら覚えていこう。

 

  さて、次は「澱青釉(でんせいゆう)」と呼ばれる鈞窯特有の失透性の青色釉に、酸化銅を加えて、還元焼成し、紫色を発色させた作品

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紫紅釉稜花盆 鈞窯 明時代 15世紀

 高台内に漢数字の「六」の刻印が見られ、器のサイズを示している。

高台内に刻印番号がある鈞窯の製品は「官鈞(かんきん)」と呼ばれる宮廷用の器

 

高台(こうだい):器の底につくられる、支えとなる台の部分。

やきものの作り方とか、素地の色とかがわかるから底はとっても大事なんだねぇ。

 

次は青花(せいか)

白磁の素地の上にコバルト顔料を用いて、筆で文様を描き、透明釉をかけて焼成する技法。日本では染付(そめつけ)という。

 

ぐっと現代のやきものに通じる作品があらわれてくる(逆かな。現代のやきものが古代のやきものを追っている?)。

 

麒麟文瓶 元時代 13~14世紀     龍文高足杯 元時代 14世紀

いずれも景徳鎮窯

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 すがすがしい白と青、のびやかな麒麟と龍、すてきな作品だ。

 

 そういえば、館蔵品に大物がある。高い技術に圧倒される。

 重要文化財 蓮池魚藻文壺 元時代 14世紀 景徳鎮窯

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時代が下って明時代の作品

 青花は中近東にも輸出され、輸出先の人々の好みに合わせた作品も生産された。

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宝相華文稜花盤      花唐草文碗      龍文鉢

左  盤 明時代 永楽(1403-24)
中央 碗 明時代 成化在銘(1465-87)

右  盤 明時代 正徳在銘(1506-21) いずれも景徳鎮窯

 

今日の最後は 館蔵品のこの作品

宮廷で用いられた梅瓶(めいびん)

ふたの部分にのみ、青花で文様が描かれ、白の美しさが際立っている。

青花 内府銘 梅瓶 明時代 永楽(1403-24) 景徳鎮窯

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明・清代の華やかな色彩と文様の世界は次回にとっておこう。今日はここまで

 

 

 

 

イセコレクション展から学ぶ 2日目

今日はイセコレクション展の中から、名品花盛りの宋時代から元時代。

作品と窯の名前、特徴とされる技法などを結び付けて覚えよう。

この夏の館蔵品鑑賞のおさらいもできる。

 

最初は唐時代の終わりごろ「秘色」青磁とたたえられた最高級青磁を産み出した越窯の水注 北宋時代 10世紀

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青磁劃花雲鶴文水注

 

続いて、現在でもよく知られている景徳鎮窯の青白磁 北宋時代11~12世紀

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瓜型水注    杯 托   

白磁白磁の胎土に鉄分をわずかに含んだ透明釉をかけたもので、青みを帯びた色調から「影青(インチン)」とも呼ばれる。

 

そして定窯 金時代 12~13世紀の作品3点

 河北省の定窯では、晩唐時代から白磁がつくられ、宋から金時代にさかんに生産が行われた。

酸化焼成によるやや黄味を帯びた柔らかな象牙色の釉色は「牙白色」とも呼ばれる。

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瓶     印花柘榴唐草文碗     銹花蓮花文盤

おなじみの館蔵品ではこちら。 北宋時代11世紀 刻花牡丹文瓶 

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印花:素地に文様の型をおす装飾
◎銹花(しゅうか):鉄泥による絵付け

 ◎刻花片切り彫りともいう。工具の刃をねかせて文様の輪郭を描く方法

 

 次は磁州窯

のびのびとした模様がとてもモダンな瓶 白地鉄絵牡丹文瓶

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磁州窯を代表する装飾技法といわれる白地黒掻き落しの作品

黒釉刻花牡丹唐草文瓶 

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黒釉刻花:白化粧地の上に鉄絵具をかけ、模様の周囲の絵具をへらで掻き落とし、その上から透明釉をかけて焼成する技法

手の込んだ技法でつくられた館蔵品の磁州窯作品を2点

 

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黒釉刻花牡丹文梅瓶     緑釉黒花牡丹文瓶

 

そしてさらに青磁の名窯 耀州窯・南宋官窯・龍泉窯と続いて見ていこう。

耀州窯

片切り彫りで深く刻まれた模様に、オリーブグリーンの釉が厚くたまって美しい。

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青磁刻花牡丹文鉢     青磁刻花唐草文鼎形香炉

鉢は北宋時代11~12世紀、香炉は北宋・金時代12世紀

 

館蔵品では重要文化財のこちらの作品 青磁刻花牡丹唐草文瓶 北宋時代11~12世紀f:id:ivoryw:20171022185757j:plain

 

南宋官窯

南宋の都臨安に修内司(しゅうないし)官窯と郊壇下(こうだんか)官窯の2つの官窯が設置された。

その特徴は黒く緻密な胎土を薄く成形し、釉を何層にも厚くかけていること。

青磁 輪花盤 12~13世紀 失透性の粉青色とも呼ばれる美しい釉色が発色している。

全体に網目状の貫入がはいっている。

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貫入:素地と釉の膨張率の差などによって、陶磁器の釉にこまかいひび割れがはいっている状態

館蔵品ではこちら 青磁 八角瓶 南宋時代 12世紀

 

 本当にたっぷりと釉がかけられて、とても品のある作品だ。

 

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龍泉窯

龍泉窯の青磁鎌倉時代以降、貿易によって日本に大量に輸入された。そのなかで南宋時代から元時代の粉青色の美しい青磁は、「砧(きぬた)青磁」と呼ばれ、珍重された。

日本ではその写しも各地でつくられたため、龍泉窯青磁は日本人には最もなじみの深い中国陶磁の一つとなっている。

なるほど、確かに青磁といえばこんな青緑色を思い起こす。

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青磁貼花牡丹唐草文瓶     青磁貼花魚文盤

瓶は南宋・元時代 13・14世紀  盤は元時代 13・14世紀

今日の最後は重要文化財と国宝を見て終了。

 

重要文化財 飛青磁瓶 元時代13~14世紀

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とろんとした釉色がたまらない。

青磁(とびせいじ)鉄分で斑点のような装飾が施された青磁に対する日本独自の呼称

 

館蔵品ではこの2つの名品。

重要文化財 青磁鳳凰耳花生 南宋時代 12世紀 

国宝 飛青磁花生 元時代 14世紀(現在国宝展に貸出中)

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青磁鳳凰耳花生      飛青磁花生

なんで、宋・元時代にこんな素晴らしいものがいっぱいできたのだろう。

目の幸せいっぱい。明・清時代はこの次だねぇ

 

 

 

イセコレクション展から学ぶ

中国の長い長いやきものの歴史を、現在東洋陶磁美術館で開催されている「イセコレクション」展の展示作品と館蔵品、そして、図録を読みながらサラッと学習しようと無謀なことを試みる。

 

まず、2つの壺

 灰釉 刻花鎬文(しのぎもん)遊環壺 と  灰釉 印文壺 越窯

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これを見たとき、紀元前3世紀~5世紀(戦国時代)と1~2世紀(後漢時代)というものでありながら、すでに洗練され、完成された美しさを感じて、展示のはじめから驚いた。

 

以下、主に次の3冊の書籍から、教えていただこう。

「イセコレクション~世界を魅了した中国陶磁」

大阪市立東洋陶磁美術館コレクション~東洋陶磁の美」

「中国・韓国 日本のやきもの 大阪市立東洋陶磁美術館館蔵品名品選」

 

★商周時代から春秋戦国時代にかけて青磁の前身といえる「原始青磁」が浙江省北部を中心に発展した-----「商(殷)」って、紀元前17世紀ごろの王朝がでてきた。後漢ぐらいで驚いてはいけないのだ。

 

後漢時代になると、ついに成熟した青磁が越国の地で誕生した。

 

ここで基本の言葉をおさえよう。

 ◎灰釉(かいゆう):木炭や石灰などを媒熔剤(釉をとけやすくする成分)とし、約1,250度以上でとける高火度釉

 ◎青磁:灰釉に酸化鉄を呈色剤(釉に特有の色を出す成分)として加え、還元焔焼成すると青緑色が発色される

 

つまり、浙江省北部地域で、1,000年以上かけて、高い温度で焼く灰釉の技術が磨かれてゆき、美しい青磁が産み出されたということかな。

もうすでにため息がでるけど、ここからさらに長い青磁発展の旅があるんだねぇ。

 

さて、次は副葬品の陶器

地中にあって銀化(化学変化)した 緑釉 獣環壺 後漢時代2~3世紀

とても銀化の部分が広がっているが、それはそれできれいだ。

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★青銅器の「鐘(しょう)」を模ったもの。副葬用の明器(死者とともに墓におさめた器物)

 

★副葬品としての低火度鉛釉の陶器は後漢時代に流行した

 

鉛釉:酸化鉛を媒溶剤とした、約800度でとける低火度釉

 ◎緑釉:鉛釉に酸化銅を呈色剤として加え、酸化焔焼成し、緑色が発色する。

 

 

続いて同じく副葬品として人物を模った2作品

加彩 官人 俑 北魏6世紀       加彩 女俑 唐時代8世紀

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 ◎俑(よう):副葬用の陶器人形

やさしい仏像のような官人像と、手に何を持っていたのかなと惹きつけられる女性像だ。

 

昔の人は、死後も生前と同じような生活をしたいと考えて、いろいろなものをお墓に埋葬したのだ。

 

唐時代の俑といえば、やっぱり館蔵品のこの女性をはずせない。

気品ある立ち姿でいつも来館者を迎えてくれるシンボル的な存在だ。

 

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加彩 婦女俑

 

唐時代では三彩がとても有名だ。 

三彩長頸瓶    三彩貼花宝相華文有蓋三足壺   三彩蓮花文三足盤 

すべて唐時代 7~8世紀    

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エキゾチックで華やかな作品。盤の青色は非常に鮮やかであった。

 

 ★唐三彩は、7世紀から8世紀にかけて、河南省の鞏義窯を中心とした華北各地でつくられた。

 

三彩:緑釉、褐釉などを素地にかけわけて、800度前後の低火度で酸化焔焼成したもの。

褐釉:鉛釉に酸化鉄を呈色剤として加え、酸化焔焼成すると褐色に発色する。

藍釉:鉛釉に酸化コバルトを呈色剤に加え、酸化焔焼成すると藍色に発色する。

 

館蔵品のこちらも 加えよう。

三彩貼花宝相華文水注 唐時代7~8世紀   三彩獅子 唐時代8世紀

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貼花(ちょうか):素地に別づくりした装飾を貼る技法

 

国際色豊かな唐の繁栄を偲ばせる作品だ。

 

これで1,000年くらいかな。つづきはまた今度

 

イセコレクション展 黄褐色の瓶について

イセコレクション~世界を魅了した中国陶磁 国際巡回企画展を再訪

 

今回はカメラを携えて、撮影しながらゆっくり作品を鑑賞した。

展示作品86点を1点ずつ見開きで解説している図録もいただいた。(86点のほかに会場には青銅器や堆朱の箪笥などが展示されている)

 

東洋陶磁美術館の館蔵品とイセコレクションの作品を鑑賞し(何と贅沢な!)、図録を読み、自分の撮った写真で作品に出合った印象を思い出しながら、これから中国陶磁のことを自分で少しずつでも勉強しようと意気込んでいる。

 

が、その前に、前回見て、忘れられずにいた作品について記録しておこう。

青磁 長頸瓶 南宋官窯 12~13世紀


(本当はもっともっと美しい色です。ご覧になりたい方はぜひ美術館に足をおはこびください。)

 

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最初この作品を見たとき、青磁と言いながら黄褐色で、しかも何とも形容のできない肌の感じに目を離すことができなかった。

やきもののうわぐすりというのは、いくらたっぷりかけてあってもそんなに厚みはないはずなのに、どんどんその釉の世界に引き込まれてしまうような不思議さがある。

 

今日、あらためてその作品解説を読み、なるほどと唸った。

まず、作品の色については本来は「粉青色」、並んで展示してある輪花盤のような色を

望んで焼かれたのではないかということ。

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青磁は還元焔焼成(と、とりあえず覚えておこう)で発色するが、この作品ではそれが酸化焔焼成になってしまい、黄褐色になっている。

 

しかし、日本ではこのような淡い黄褐色を稲の籾に例えて早くから「米色(べいしょく)青磁」と呼んで珍重しているのだそうだ。

 

そして、あの不思議に見える釉薬については「ガラスの透明感が強く、大きめの貫入と小さな貫入が立体的に入ったいわゆる『二重貫入』となっている」とある。

そうなのだ。小さな泡が湧き出すといったらよいのか、じっと眺めていると取り込まれてしまいそうだ。

まったくうわぐすりの魔法にかかったようだ。

納得しながらも、またも作品の前を去りがたく、何度か戻って眺めていた。

 

あぁ、楽しかったな。この展覧会が終わる前にもう一度会いたい。

今日はここまで。

 

 

 

 

イセコレクション展が始まった。

日記といえなくても、たまに文章を考えるだけで、頭の活性化に効果があることを実感する。中国陶磁の窯の名前などを少しずつ覚えられるようになっている。

 

さて、先週の土曜日(23日)から、東洋陶磁美術館でイセコレクション「世界を魅了した中国陶磁」展が始まっている。

濃いピンク色の大きな垂れ幕が美術館の壁を覆っていて、せんだんのき橋を渡る前から良く目立つ。このたびは派手だねぇ。

 

イセコレクションの展示は、いつもはイ・ビョンチャン博士のコレクションが展示されている3階の展示室と2階の日本陶磁の部屋の2室に展開されている。

3階の第1会場に入る前に、ロビーに飾られた紀元前12~11世紀殷時代の青銅器に足が止まる。

 

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饕餮(とうてつ)文 双耳壺

魔物の顔をした恐ろしげな耳がついている。出土品という感じではなく表面が磨きこまれたようにきれいで、厳かに重々しくおかれている。

古代の祭壇に供えられていたときは、もっと鋭い光でぴかぴかに輝いていて、霊力を発していたのだろう。と、しばし想像(妄想)をめぐらす。

 

中国陶磁を見る前から、期待がふくらむ。どんなコレクションだろうか。

 

まず、戦国時代や、後漢時代の灰釉の壺があった。その、古さとすでに完成されたような技術の高さや端正さに驚かされる。

 

そして、次々、唐、北宋南宋、元、明、清とすばらしい作品が現れ、ぎゅっと濃縮された中国陶磁史を見せていただいた思いがした。

 

何と、この2室にわたるイセコレクションと、いつもの館蔵品の中国陶磁の展示を見ることによって、中国陶磁史をダイジェスト版で知ることができる。しかも第一級の美術品によって。

 

しかも、うれしいことに、この展覧会も写真撮影可である。

次回はカメラを持参して、撮影させてもらおう。

そう、青磁なんだけれど黄土色のとても美しい瓶があった。あの作品は忘れずに写真におさめよう。

  

さらに、この冬の特別展も楽しみだ。

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唐代 胡人俑



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

柴窯とは2 

柴窯とは 

「幻の至宝 柴窯発見」(對中如雲著 祥伝社)によって教えてもらったことをまとめておこう。

歴史的文献によるとして、

中国 五代十国時代 後周(951年~960年)の皇帝柴栄(さいえい)がその地位にあった954年から959年までの5年間だけ焼かれていた皇帝のための窯(官窯)

 

1,000年以上も前に作られ、窯が開かれた期間も短期間であるため、希少性が高い。

完成品も窯跡も発見されていない究極の至宝

明代の文献では、宋代の五大名窯よりもさらにワンランク上と位置づけされる。

 

なんと、あの汝窯より上なんて、どんなやきものなのか想像もつかない。

 

この本では、中国陶磁史についても一般向けの読み物として、わかりやすく書かれていて、少し私の頭の中の整理もできた。東洋陶磁美術館で展示された作品を思い起こしてみよう。

 

宋代の五大名窯

汝窯(じょよう)北宋汝窯水仙盆」展の記憶はいまだ鮮やかだ。

 

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館蔵品と特集展の特別出品

南宋官窯(なんそうかんよう)八角瓶(はっかくへい)

たっぷりとかけられた釉が何とも言えない作品

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哥窯(かよう) 非常にたくさんの貫入(かんにゅう)がはいった管耳瓶(かんじへい) 不思議な感じがする作品

 

鈞窯(きんよう) 

水色のなかに紫の斑が浮かんでいる澱青釉紫紅斑杯(でんせいゆうしこうはんはい)

月白釉碗(げっぱくゆうわん)淡い水色の朝顔形の碗 この間の平常展にはなかったような気がする。次に展示されたら、ゆっくり見ておこう。

 

定窯(ていよう)薄づくりの優雅な白磁

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刻花牡丹文瓶 刻花蓮花文洗 印花花喰鳥文盤

深みのある色 柿釉碗 これも定窯ですね。

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 五大名窯のほかにも宋時代には、龍泉窯、磁州窯、建窯とまだまだ名窯があるのだ。

龍泉窯(りゅうせんよう) 自分の中の青磁のイメージとはまさにこんな色合いだった。

(実物とこの写真はだいぶん色が違いますが)

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長頸瓶 銘「鎹」  鳳凰耳花生

磁州窯(じしゅうよう) 掻き落しという凝った技法

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緑釉黒花牡丹文瓶  黒釉刻花牡丹文梅瓶

建窯(けんよう) 東洋陶磁美術館の建窯といえば国宝油滴天目茶碗

耀州窯(ようしゅうよう)

東洋陶磁美術館の顔のひとつ 刻花牡丹唐草文瓶

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大雑把にだんだん覚えていける気がするね。よかった。今日はここまで。