唯一出かけたいと思う場所(東洋陶磁美術館)

出不精の私だが、ただ一か所だけ、自発的に出かけようと思う場所がある。大阪市立東洋陶磁美術館だ。美術館の友の会の会員になると、時々開かれる講演会への案内がもらえるので、昨日は拝聴してきた。

 

自分の中で、この美術館が大事な場所と思うようになったのは、いつのころか。

お世話になっている人から、上海からきた友人を半日、大阪の名所に案内してほしいと頼まれ、断るわけにいかず、困ったことがある。言葉も通じないのにどこへお連れしたらよいものか。芸術関係の方だと聞いたので、私は苦し紛れに、彼を東洋陶磁美術館と高島屋で開かれていた「田中一村」の展覧会に案内した。だいぶん昔の話である。その頃すでに東洋陶磁美術館は私にとって、特別な場所だったようだ。

 

さて、私の偏った選択によって、美術館に案内された上海の人は、私の心配をよそに、館内の展示品を舐めるように鑑賞し、すっかり満足されたのだった。本家本元の中国の人でも、凝縮されたコレクションを見る機会は少ないのかもしれない。また、彼は本当に審美眼を持っている方だったのだろう。

 

審美眼を持ち合わせていない私のほうは、ただ単に古代の陶磁器を眺めて心が落ち着く場所として、年に数回行ったり行かなかったりを続けていたが、4年前に開催された「定窯」展のころから、興味が深まってきて、最近は少し陶磁器について勉強したいと思うようになった。昨年末から開催され、この春に終了した「北宋汝窯青磁水仙盆」展に感銘を受けたせいであろうか。

美術館側では何年も前の特別展から、この「汝窯展」につながる道筋を企画されていたのだろうか。その結果として、私のようにたくさんの人に素晴らしいものを見る機会を与えてくれたのだ。ありがたいことである。

汝窯展」で頂点を極めたように思う美術館の企画がこれからどのように展開するのか、私の年末にかけての楽しみである。